[4] 1090.
#05. Error 誤搬送 [6]
#07. Cracking 処分 [14]
#08. Reboot 脱出 [7]
成功するかどうか。
そんな事は然程どうでも良かった。
(役に…立て……)
時に揺れる視界に浮かぶ、シャルの顔。
彼の瞳孔はまた、ジワジワと開いていく。
それに合わせて、勝手に笑みが浮かぶ。
廃材でどこまでやれるかは分からないが、ゼロから派生させ、更に人体の構造に近づけた。
背後のデスクには、初めてレイシャに出会った際、その鞄に入っていた本と同じ物が置かれている。
気になったものを一度見れば、記憶するのは当たり前だ。
更にその後の会話で、医学知識にも気を引かれた。
医薬品開発をする場であっても、医者ではない。
持っている医学知識は、この職に就く為に必要なもののみ。
持ち前の特性は、目まぐるしく発揮されていった。
端には別の医学関係の本が積み上がっている。
そして、エンバーミングに関するものも混ざっていた。
マーカーの加速は止み、それをホワイトボードのレールに放り投げる。
まるでランニング上がりを思わせる程、汗だくで息を荒げていた。
置いていたボトルを手に取り、歯で開けると零れる事も気にせず一気飲みする。
拭った流れで乱暴に置くと、次に目に留まったのは骨格設計図の、手の部分。
(…手………)
その記憶が蘇ると、震えが起こる。
手が無い。
作った義手も、碌に着けていない。
リハビリもした事がない。
左上半身に、興味が無い。
しかし、そうも言っていられない。
ここで漸く、まともに左腕に目を向けた。
長くは見ておられず、すぐ目を背けるも、想像はついた。
(……先……やるか……)
先を考えると、右手だけでは厄介だ。
先と言っても、どうせ長くはない。
そんな事もまた、見越している。
(……遅かれ早かれ………人は死ぬ……)
汗に湿る髪の隙間から覗く、虚ろな目。
光を失ったそれが映すのは、どちらも黒い過去と未来か。
しばらくしてホワイトボードに近づくと、作図に拳を叩きつけ、睨んだ。
線をじっくりなぞるように、視線を這わす。
左手を、作る。
そのイメージを膨らませていった。
どうせ作るならば、ただの手では物足りない。
しかし、あの女と同じ廃材で作るのは御免だ。
その場から離れ、窓に向く。
日付が変わろうとしている頃か。
闇夜を纏う、海洋バイオテクノロジー研究所。
今、敷地ではこの部屋の光のみ。
もしここが変化するならば。
叶うかどうかも分からない事を想像するのが、単純に気楽だった。
殺気に満ちている目は、徐々に下に落ちていく。
窓枠に乗っかる1瓶。
採取もまた、チョロいものだった。
それを手に取ると、鼓動が全身を叩き、響かせる。
眼振が伴うと、口角が僅かに上がった。
彼はそれを強く握り締めると、闇夜を髪の間から睨め上げる。
そこにはもう、以前の己はいやしない。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




