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― 私、いっぱい服着て流行りを宣伝するのよ!
かっこいいモデルになるの!
その為には、ダイエットなんかじゃなくて、ちゃんと運動して食べなきゃいけないんだから ―
― そういうもの?
太ったらダメだから、食べないのかと思った ―
― 違うわ!
栄養を取らないと、いい体は手に入らないの。
特に今の時期の私達は、食べて動かないと、骨粗鬆症になるリスクがある。
そうなると、将来仕事ができないわ。
肌にも悪くて、化粧が最悪になる。
だから、ダイエットは止めてレイシャ ―
中学の時に出会った、レイシャという不思議な女の子。
色々な事に思考を巡らせ、突拍子もない事を思いつき、口にする事で、変わり者呼ばわりをされていた。
家の事でも、揶揄われたりしていた。
それにへこたれず、相手が男の子であれ関係なく噛みつく彼女に、私は憧れていた。
でも、彼女のそれは強く見せているだけが多く、影で泣いていたり、怖がって震えている事を知った。
それに何を言っていいか分からなかった。
私は、誰かがそんな風になっている時、言葉を掛ける事が本当に下手くそだ。
だから、一番できる事をした。
何も言わず、ただ抱き締めて一緒にいる事。
それから、今でもずっと共に生きている。
お互い苦労をしながら、学校よりも厳しい大人の世界で、なんとかやってきた。
でも、もう辛くなってきたよ。
どんなに戦っても、成果が出なくて。
貴方に励まされて、ここまで頑張ってこられている、そう思っていた。
今でも忘れず、思っている。
だけど
ねぇレイシャ……貴方は…
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「貴方は……私を……
綺麗に……強く……してくれる……?」
いつかの時のような自分を、もう一度取り戻せないだろうか。
欲を言えば、それを超えるような自分を。
レアールはいつものように望みを呟いては、窓に向かって泣いていた。
あの晩に出会った彼の顔が過る。
名前はヘンリーと言った。
やっと分かったはいいものの、結局離ればなれになっているようだ。
一体、彼は何を考えているのだろう。
レイシャは寂しがり屋だと教えたのに、困った男だ。
そんな気持ちがふと、心に若干のゆとりを持たせる。
また、会ってみたい。会って、言ってやる。
(困らせないでよ……
彼女は…貴方を想ってるんだから……
フラフラ、現れたり消えたりしないでよ……
安心できないじゃない……)
冷たい風がよく吹くようになった。
秋から冬に向かっていく。
その時季は、益々心が寂しくなり、不安に駆られやすくなる。
落ちるのがすっかり早くなった、遠くの夕日。
遠いくせに、光だけは凄まじく、顔をしっかりと照らしてくる。
そんな迫力が、自分にも欲しい。
レアールは切れ長の目を薄く閉じ、手にしていた温くなった紅茶に目を落とす。
(…………砂糖……)
また、栄養を取り忘れていた。
直に、夕日の迫力が失われていく。
顔を見せた冷たい秋空は、彼女を隠すようにそっと、その空間を暗くした。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




