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[19]         1190.



#08. Reboot 脱出 [7]

#12. Complete 細胞の記憶 [5][22]






 「ええもうすっかり落ち着いた。

悪いけど、相談してた仕事の件は一度白紙にさせて…

暫く空けたいから……」




言いながら玄関の外へ出ていくシャルの背を、ヘンリーは一旦止まって見届ける。

ドア横の窓ガラスに彼女の影を確認すると、彼は再び進んだ。






 微かな夜風が、どこかから虫の音を運ぶ。

冷たい空気に静かに響くそれは、再び彼女の声に消えた。




「怒涛だったわよ。

この際、ちょっと旅にでも出ようかしらね」




背を向けていた彼女は、通過する彼に気づかず話し続ける。




「ほんと、疲れた……

ロボットの処分までさせられた時は特に……

やっと解放された気分よ」




その言い終わりを聞きつけるなり、フェンスの手前でヘンリーの足が止まる。




 言いながら振り返った彼女は、彼を目にするなり中へ戻ろうとする足を止めた。




「まぁまたその内。わざわざありがとう」




相手は分からないが、その関係は遠からず近からずといったところか。

まるで気が向いたら話すような、そんな風に取れる会話に終わる。

そして




「ヘン



「あっちの片付けの事で、また連絡する。

大方、それで最後になるよ」




肩越しに少しだけ振り返り、伝えた。

彼女は、そこに浮かぶ彼の表情と声が平然としたもので、驚いている。




 彼は戸惑いながら頷く彼女を確認すると直ぐ、夜道へ消え去った。








挿絵(By みてみん)




 まるで、岩を打ち砕く音を延々聞いているようだった。

光も、香りも、色も、捉えられない。

鳴り響くのは、激しい動悸だ。

そして、数メートル離れた先で立ち止まると、聞きつけた声がループし始める。




“物は捨てて存在していない 汚点が残る 

研究所の事だけでも痛い 

築き上げてきた物に影響が出るのは困る 

それなりの取引をし、向こうも受け取った 

ならいいけど”




 足がフラつき、数歩、無意識に進む。

シーツを被る幽霊のように、袖を垂らした左手と、まともな右手。

どちらも凍えるように、全身から震えていた。




 両目を覆い、右手で掴まれた髪は、憎しみと合わさり毟られる。

腕の下では、激しい眼振に血走る目。

開いた瞳孔は、そこにはいないあいつ等に向く。

のうのうと笑う奴等の画に、亀裂が入る。

喉が震え、激痛に悶える声が零れた。




“ほんと、疲れた ロボットの処分まで 

やっと解放された”




呼吸は荒れ、喉から手が出る程に酸素を欲する。

その口からは、唾液が流れだす。

動悸の拘束は更に強まり、苦痛の声が漏れる。




“ちょっと旅にでも出ようかしらね”




「はっ……たっはっ……はっ…!」




気づけば、半端な手で覆われた顔が上を向いており、笑いが込み上げる。




「はははっ!」




突如大きく項垂れ、右手を膝に付き、前屈みになる。

動悸に息切れはまだ続く。

そこに隈なく捻じ込まれる、不本意な笑い。




「はっはっはっ!はっ…はっ……は……あーあ」



(うぜぇ…)



「ああー殺ってやるよ……連れてって殺るよ……

俺が…逝かして殺らあああ!」




真っ暗闇に漂う大気に、その声は轟く。

吠え飛ばし、散った飛沫の向こうに、最悪の(みち)は開かれた。









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




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