[18] 830.
#08. Reboot 脱出 [7]
「出てはない………
その…話してあるのかしら…?」
ノーランも僅かに、上の部屋に視線をやる。
「病院で目が覚めた時に言ってある。
まぁ、未だにあの態度だ。
事細かには話せてはないが」
「調べてないかと思って…
向こうのデスクは直ぐに片付けたけど…
彼はアルフの家に住んでる……
物は捨てて存在していないにしても、資料がどこかに残っていないかと思うとね……
警察は何も…?」
「よく知る銃器開発者が絡んでいて、そことも話しをした。
検証段階のあれは、商品化が近かったようだな。
何考えてんだか全く…親父も子どもだよ……
物が物だった…こちらで責任をもって、安全に処分すると説得したら、何とか頷いてもらえたさ。
そうでないと…」
冷たい、無音のリビングに佇むダークブラウンのアンティークテーブル。
艶を淡く放つそこに、ノーランのぼやけた影が落ちた。
意味も無く、その表面に触れると顔を上げる。
「そうでないと汚点が残る。
あの研究所の事だけでも痛いのに、それ以外で築き上げてきた物に、影響が出るのは困る。
ジェレクもこれからって時だ。
尾を引かせない為にも、それなりの取引をし、向こうも受け取った。
先の為ならばこれくらい、どうって事ない」
「なら…いいけど」
偉人の孫であり、知名度がある自分の、息子。
それが殺人未遂を犯したなどと出回れば、何が起こるか。
想像は容易い。
そこへ、シャルの携帯電話が鳴った。
ノーランは無言で手を差し出し、促すと、階段へ足を運ぶ。
呼び出し音がしばらく鳴ってから、彼女は誰かと話し始めた。
ヘンリーはやっと部屋から出ると、上がってきた父と廊下で対面する。
数秒、顔を合わせた。
父は、平然とした顔で首を傾げる長男に、少々目を丸くさせる。
今になってやっとまともに顔を合わせるが、ケロッとした彼の様子が、父には意外に思えた。
「おやすみ」
ヘンリーはそれだけを告げ、階段を颯爽と下る。
「おい」
「そう、あの家。出るから。
遺品整理あるし、また連絡するよ」
淡々と話す彼に、父は半ば驚きながら小さく返事をした。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




