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 祖父の遺体はエンバーミングが施され、約2週間安置された。

有名人である彼を多くの関係者が訪れ、弔いの言葉が父に送られる日々が続いた。






 一方ヘンリーは、あの時以来一滴も涙を流していない。

祖父の死を横に、研究所の片付けをする事と、事故の事ばかりが気になっていた。

祖父とは亡くなった当日に対面し、そこからは誰とも顔を合わさずにいる。




 体の痛みや、手の違和感に吐き気が続く日々を乗り越え、懸命に事故当時を思い出そうとしていた。

父は病院で話したと言うが、改めて聞く気になれなかった。




 腕がどうして失われたのか。

全身に残る痛みはどこからのものか。

明確なのは断片的な記憶。

真っ白な光の奥に浮かぶ、シャルの姿。

次に、あの時の父の発言。




“泣いて俺に謝ってきた…怪我を負わせたと……”




彼女も酷い精神状態に陥り、仕事を休んでいた。

接触が無いのは、恐らく父の指示だろう。

少し考えるだけで、気持ちよりも先に体が反応する。

手の震えから、動悸を呼び起こす流れに変わる。

それは圧倒的に、これまでにない程の強い怒りと焦燥によるものだった。






 この場は、とうとう自分独りだけになっている。

従業員の荷物も、住居も空だ。

治験モニター中だった被験者達の契約終了サインも、全て集められていた。




 誰もいない。

その空間を直接肌で感じた瞬間、走馬灯の如くこれまでの出来事が流れていった。




(……皆…消した……俺が…)




恐ろしく静かな研究所に、背中から一気に肌が粟立つ。

これから、ここを手放す。

ヘンリーは、鋭く空間を睨め上げた。

そこへ




(……熱…?)




意識はふと、ある記憶に移り始める。

瞬間的だったが、切断部分がかなり熱されたような感覚を思い出した。

それは一体、何によるものなのか。

どこにでもある光から連想する事が難しく、ひとまず、シャルと祖父の書斎を調べる事にした。









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




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