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[8]          1010.




「………誰だ君は…」




「事情は知らない。

でも、こんなの見ていて妙よ!

どうして彼の話を聞かないの!?

彼は何か言おうとしてた!

今だって!何度も!」




父のノーランは、レイシャの手を乱暴に解き、蔑むような目つきをする。

そして、ヘンリーを振り返った。




「ヘンリー。

客人がいるなら、ちゃんと義手をつけろ。

失礼だろう」



「義手…!?」




レイシャは目を見開き、彼を振り返る。






 その首は、まるで前に完全に折れたように上がらない。

静かに吹きつける風は、彼の左袖を大きく靡かせていた。

その姿に、彼女は徐々に青褪め鳥肌を立てる。

首は勝手に、フラフラと振られた。




「一体…一体何が



「関係無いだろう。

踏み込まれる筋合いは無い。

急に現れ偉そうに、感じた事をそのまま吠えるのは、礼儀がなってないんだな。

………似たようなところか」




言い終わりに、ヘンリーを睥睨(へいげい)する。






 ヘンリーは、一切言葉を発さなかった。

発せなかった。

地面を凝視したまま、石のように動かない。




「もう行く。

ヘンリー、状況を考えろ。

今のお前は、女性を連れ込んでる場合じゃない」




「ちょっと…どうして…何でそんなっ…!?」




理解に苦しむレイシャの目には、半ば涙が浮かんでいた。

何故そのような当たり方をするのか。

聞き捨てならない発言が、耳に付いてならない。

また手が伸びようとしたところ、ヘンリーが急に踵を返し、足早に家に戻って行く。




「ヘンリー!?」




彼女は咄嗟に後を追った。








 部屋に入り、階段を数段登ったところで再び彼が現れる。

足取りも、玄関ドアを開くのも、荷物を持つ手もなにもかもが乱暴だ。




「待ってヘンリー、待って!一緒に行く!」




不意に出た言葉に合わせ、彼の手を掴もうとした。

だが、そこに手は無く、レイシャは慌てて袖から手を引っ込める。




「えれっ…」




囁かれたそれに眉を顰め、聞き直そうとすると




「帰れっ!」




大きな声に、彼女は怯んだ。




「お前っ!

来るなって言ったのに何で出てきたっ!?」



「やっ!」




震える右手は、気付けば彼女の肩に激しく掴みかかり、大きく揺さぶった。

その拍子に合った彼の目は、悪魔のようだった。

瞬きを忘れて眼振を見せる。

最後に見た顔が、先程部屋で見た穏やかな顔が、失われていた。

怒りに顔が引き攣り、筋肉が強張っている。

レイシャは堪らず涙を零した。




「二度と……来るな……失せろ……

お前を……見たくない……」




ヘンリーは彼女の肩を突き放すと、無心で病院に向かった。

彼女は脱力し、震える体をしばらく玄関の柵に預け、泣いた。









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




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