[5] 660.
#08. Reboot 脱出 [7]
#10. Tracking 再回収 [8][9]
「ヘンリー、いるんだろ?」
連続で放たれる声に、彼は慌てて立ち上がる。
少々躓いたところをレイシャが支えようとしたが、それを払い除け、振り向きざまに言った。
「来るなっ…」
声は掠れ、弱々しい。
彼は部屋を飛び出し、階段を下りていった。
「………ヘン…リー…」
彼女は漸く、名前を知った。
しかし、誰が訪れたのか。
彼の顔色の変化が異常に思え、部屋のドアまで近寄り、聞き耳を立てた。
ヘンリーは焦って駆け下りると、そこには父が立っていた。
明らかに、何処かへ向かうついでに立ち寄った様子だ。
「お前、電話にぐらい出ろ」
寝起きで声の出が悪い。
だが、そもそも以前ほど声を張れない今、謝罪を零しても父には聞こえなかった。
「さっき病院に行ってきた。
じいちゃんに顔見せてやれ…
いつ急変してもおかしくない…」
そんなに進行していた事も知らず、顔は引き攣った。
父はそれだけ言いに来たのか、早くも踵を返しながらハットを被り直す。
だが、それはただ、別件を切り出す為のアクションだった。
「ああ後…あそこだが、解散で手を打った」
「…………………は…?」
あそことは、ただ1つ。
父は、祖父が建設した海洋バイオテクノロジー研究所を、完全閉鎖する手続きをしたと言うのだ。
「これ以上半端にクローズしていたら、関係者に迷惑がかかる。
もう1ヶ月近くになろうとしてる今、判断は早い方がいい。
それに…彼女も続けられる状態じゃない」
シャルが頭を過ると、体に熱を帯び始めた。
淡々と話す父にも、気づけば鋭利な目を向けている。
落ち着け。
ソワソワし始める右手で大腿に触れ、何とか平常心を保とうとした。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




