[3] 1040.
何かがまた、聞こえてくる。
悲鳴や怒号が脳内に籠り、響いている。
手首や肩に、圧力がかかる。
誰もいない部屋なのに、まるで誰かに拘束されているような感覚に陥る。
痛みに、右手でフラフラと宙を掻き、力無く藻掻いた。
過るシャルの影。
覗き込むビルの影。
自分の身に起きた事をわざわざ、改めて聞こうと思えなかった。
体がこんなにも、勝手に再生してくるのだから。
断片的とは言え、十分過ぎる情報だ。
宙を掻く手は終いに、目を覆う。
(……出て…来るな……見る…な……喋る…な……)
口が数回、震えながら空気を求めると、翳した手は落ちた。
その後、大きく項垂れ、気を失った。
もう何度目になるか。
レイシャは彼の家を今日も訪れた。
レアールとはあれから数回顔を合わせ、体調を整える手伝いをしていた。
その傍ら、不安を抱えた状態でのスタートであったが、エンバーマーとしての仕事は進んでいた。
秋の冷風に流れる雲が、太陽を覆い始める。
太い陽射しは影に変わり、見えた小さな一戸建ての色を濃く象った。
「!?」
そこへ飛び込んだ光景に、息が止まりかける。
彼の家の玄関が、半開きになっているではないか。
目を見開き、彼女はそこへ飛びつく。
「ねぇ!いるの!?」
薄暗いそこは、人気がない。
不思議な感覚だったが、彼女は数回、挨拶も交えて同じように呼びかける。
「入るわよ?」
留守ならば、無防備にも程がある。
目前に階段を見つけ、上の階に向かってまた声をかける。
反応がない。
しかし、気になって彼女はそっと上がっていく。
上り切ったところでまた、声を張った。
誰もいないのかと、直ぐ傍のドアをノックし、開けてみる。
薄暗いそこは書斎で、書物特有の香りが流れ込んだ。
換気もなされていないのか、埃っぽさも感じる。
カーテンが閉められ、人がいないと直ぐ分かると、その場を後にする。
数歩先を進むと、別のドアに辿り着いた。
薄く開いたそこに目を凝らし、ノックに合わせて声を掛けながら、恐る恐る開くと
「……ちょっと!?」
ずっしりと床に腰を落とし、ベッドの足元に凭れる彼がいた。
項垂れていたところ、今は右斜めに顔を上げた状態で眠っている。
「ねぇ!」
暗い空間に佇む姿が恐ろしかった。
彼女は慌てて部屋に光を入れようと、レースカーテンだけを残し、部屋に光を入れた。
空気も悪く、窓も僅かに開く。
「ねぇ!大丈夫!?」
しかし、彼はびくともしない。
久し振りに見る姿は、酷く疲労を滲ませていた。
それに、以前より痩せている。
顔は白いが、唇の色は正常だ。
静かな寝息を耳にすると、ただ寝ているだけだと安心する。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




