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「貴方どちら様?ここは関係者いが
「さっきの何!?誰の事よ!?言いなさいよ!」
「何なの急に…」
「言えって言ってんのよ!
病み上がりで、激痩せって!?誰がよ!?」
「ちょっと貴方!離れて!関係無いでしょ」
「関係あるわよ!彼女は大事な友達なの!
それなのに、何!?
あの子がどれだけ努力してきてるか、傍で一番見て知ってるんじゃないの!?
どこに目ついてんのよ!
あの子は弱くなんかない!
毎日戦ってんのよ!
痛い事乗り越えて、ずっと生きてきてんのよ!
いい加減な事言わないで、仲間なら助けてあげてよ!」
「レイシャ」
声に振り替えると、サングラスと帽子、スカーフで完全に顔を隠すレアールが立っていた。
そんな姿をしていても、分かる。
最悪な顔色に、覇気のない声は、レイシャを一層悲しみに追い込んだ。
「帰って」
静かに、しかし鋭さを含む彼女の声。
でも、放っておけなかった。
こんな車に乗ったら、更なる痛みしかないだろう。
スタッフに押しやられていたレイシャは、彼女に駆け寄り手を取った。
「行こうレアール!一緒に帰ろう、ね?」
「帰ってって言ってるの!聞こえないの!?
仕事中なの!話しかけないで!」
聞いた事のない怒号が飛び、周囲は一変し、凍りつく。
彼女は震えていた。
大きな黒いレンズから、透明の線が太く流れ落ちる。
「退いて。迷惑だから」
「レア
「帰って!
分かってるわよ!貴方に言われなくたって!
わざわざ掘り返しにこないで!」
彼女はとうとう、レイシャの肩を激しく押しやり、車内へ乱暴に乗り込み、奥へ姿を消す。
車は、そのまま行ってしまった。
酷く豹変した彼女を見て、レイシャは震え、涙する。
頭で何度も、辛辣な言葉がリピートされた。
嫌われてしまったのか。
(嫌…嫌嫌嫌っ…!)
レイシャは、その場から逃げるように立ち去った。
開場前は陽光に満ちていたというのに、空は厚い雲に覆われ、直に雨が降り始めた。
夜になった今も、連絡が来ない。
何も喉を通らず、帰宅するなりベッドに突っ伏して泣きじゃくっていた。
今日に向けて張り切っていた時間も、こんな風になるまでの陽気も、夢だったのか。
それらが随分、遠い過去のように思えてならなかった。
そしてやっと、携帯電話が短く音を立てた。
瞬時に飛びつき、画面を開く。
レアールからのテキストだった。
― 話せないから、電話はしてこないで。
昼間はごめん。
しばらく、写真の仕事だけになった。
いつからかは分からない。
私の体調を見ながら決めていく事になる。
また、やり直し。恥ずかしかった。
嫌な声が、沢山聞こえる。
音楽でも聞いて、今日は休むよ。
後、大丈夫だから、家には来ないでね。
今、見て欲しくないから ―
それでも電話をしたかったが、我慢した。
連絡がきた事に、レイシャはやっと胸を撫で下ろす。
部屋をオレンジに灯し、空腹を満たそうとキッチンに向かった頃、再びテキストの音がした。
― ねぇ、彼は帰ってきたかしら。
見てきてよ。そしてまた、聞かせてね ―
昼間の事は気にしなくていい事と、彼の確認をしてくるとだけ、返事をした。
変な顔文字も添えてやる。
気休めでも、笑ってもらえたらという願いだった。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




