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[5]          1030.



MECHANICAL CITY

#06. Please wait 決定 [2]-[9] 

#12. Complete 細胞の記憶 [10]






 振り返りはしなかったが、静かになっている。

彼等が追ってくる事はなかった。

ヘンリーは考える事を止め、足を更に速めるが




「ドクター・クラッセン」



「!?」




瞬時に、グラスが滑り落ちるところを左手で掴む。




グッド(Good)キャッチ(catch)!その手、反射神経が良いのね」




家の窓から顔を覗かせるのは、最近補佐官になったばかりの部下により起動された、女性のR。

彼女の家の周りには、点々と数種類の花が植えられていた。




「花、他の所にも植えちゃいけない?

ここにしかないから」




そんな事を気にしたことがない彼は、フリーズする。




「ドクター?」




馴染みの無い呼び方に、肩が僅かに跳ねた。




「………起動者に言え…」



「そう。じゃあそうする」




彼女は窓枠に両手を置くと、どこか一点を見て静かになる。

それを見て、彼は追いかける様に口走った。




「いいって……言ってるって…」



「ん?どういう意味?」




彼にとって、こんな早さで会話をするのは久し振りだった。

戸惑いに震えてしまうのを隠すのに、必死になっている。




「………俺が…許可してるって……言えばいい…」



「そう!良かった!そうする!」




彼女は先程よりも声が高くなり、力強い返事をした。

また視線を適当にどこかへ向け、数秒大人しくなる。




「伝えられた。

植えたい花があるの。

ここは、多様性や変化が沢山ある。

それに皆、忠実よね。

ドクターもそうでしょ?」




彼女が身に纏うのは、ボルドーのパーティードレス。

それは、部屋の電球色を受けて光りを放っていた。

親しみやすい、軽やかな口調で話しをする。

しばらくそんな彼女を観察している内に、ざわついていた心が徐々に落ち着いていった。

風に運ばれてくる香りのせいもあるのか。

彼は、少しだけ彼女との距離を縮める。




「………何だ…それ…」




「アスターっていう花。

色によって花言葉がある。

全部ここに合うと思うの。

今言った変化もそうだし、皆、誰かを想ってるわね。

信頼もしてる。でも心配もする。

それに、誰かは誰かを好きでいたりすると思う。

こんなに沢山、人がいるから」




花に興味を示したことはない。

彼は専ら、海洋生物や医療、数学、工業技術に集中してきている。

しかし今は、彼女が持つ別世界の知識を冷静に聞いていられた。




「………何で…詳しい…」




「フラワーアレンジメントを勉強してた。

皆に合う花を育てる。

前にもそうしようと思ってた。

そう、友達に合う花がある。ドクターにも。

そのグラス、貸して」




彼は一瞬躊躇ったが、彼女にゆっくり近づき、それを渡す。

彼女はそれを受け取るなり、ふと部屋の奥に消えた。









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




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