[2] 930.
#11. Almost done 実行 [10]
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レアールはその時、最悪な出来事を軽々口にできる程、精神が安定していた。
久し振りの舞台で成功する気満々な姿に、以前の彼女を取り戻しているようで安心した。
そしてレイシャにも、転機が訪れた。
エンバーマーの資格を無事に取得でき、その道に転職する段取りがついた。
週明けから、新たなスタートを切る。
2人にとって、重なった嬉しい出来事。
痛く苦しい日々が続いていたが、1日だけ解放されるべく、マイペースに飲み食いして羽目を外した。
きっとこの先も共に頑張れる筈だと、互いがそう思う瞬間だった。
だがその時も、顔を見なくなった彼の存在が浮かび、何処で何をしているのかと2人で呟いたりもした。
ランウェイに10人目が現れてやっと、レアールが登場する。
ついカメラの角度がズレるのを、危うく修正した。
レイシャは、息を飲んだ。
ライトに反射する、大ぶりのゴールドの花のピアス。
それに付く、パールが点在するチェーンの装飾が、鎖骨まで伸びて揺れる。
それが目立つよう、髪は一纏めに上げていた。
首元は飾らず、黒のブイネックをした、半袖のセンターシャーリングシャツを着用。
胸部で生地が目一杯絞り寄せられた形状のそれは、彼女の白いボディを臍まで露わにし、強調させている。
ボトムスも黒に合わせていた。
ドレープスカートだが、広がりを見せずタイトな形状を保つ。
とはいえ締めつけがある訳でもないそれは、自然と優雅に彼女を歩かせる。
トップスに一部類似し、腰部分の生地が、臍下にあるリング状の装飾に手繰り寄せられ、彼女の曲線を更に見せていた。
丈は爪先が隠れる程長い。
そこから僅かに見せる、黒の13cmヒールサンダルは、高身長の彼女を更にスレンダーに際立たせていた。
左上腕と手首、右手首と太い黒のバングル。
中央にはシルバーの花の装飾が光るそれらは、完璧に過去の傷を隠している。
先頭で数秒、シンプルに斜め立ちでポージング。
戻ってきた。
瞬時にそう感じたレイシャは、感涙していた。
1分程度の素早い披露だが、その僅かな瞬間の為に数多の時間を費やす。
その努力は確実に輝いていた。
だが
「っ!」
ランフェイを引き返す際、裾を踏んでしまった。
彼女はそのまま派手に転倒。
堪らず名前を叫んで大きく立ち上がると、カメラが落下し、切れた。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




