表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/145

[1]          1660.



#06. Please wait 決定 [14]






挿絵(By みてみん)




 豪雨の晩。

真っ暗闇の冷え切った部屋には、窓を叩きつける雨音だけが響く。

レイシャは、出先からそのままの格好で、ベッドに突っ伏していた。








 ロボットを動かす彼の姿を見ない日々が続く中、レアールがランウェイに立つ仕事が決まり、2人で喜びに溢れていた。

お陰で少し、彼を見なくなった寂しさは拭われていた。




 この日中は穏やかな天気で、2人にとって、気合を入れるには十分な日だった。

久し振りに、格好いい友人の姿が見られる。

レイシャは録画を頼まれており、ビデオカメラを握って席に着いていた。




 ステージ脇には、多くのカメラマンとファッション業界のスタッフ達。

デザイナーや編集者、演出家も多く揃っている。

お陰で複数列に並び、友人であるレイシャはずっと離れているが、それでもまだ、近くで見届けられる位置である。




 ステージ上手側、先端までしっかり捉えられる。

ウォーキングからポージング全てを収められるので、十分な位置だ。






 開始と同時に、その場は瞬時、ダークチェンジする。

徐々に浮き上がる白い(みち)

それはまるで、夜に浮かぶ光の橋を思わせる。




 ステップを合わせやすい音楽が、重低音と共に鳴り始めた。

レイシャはカメラを肘で固定し、肉眼で、瞬きなしにそこを凝視する。

3人、4人と、流れるように似た体系をした女性、男性が交互に颯爽と現れた。




 彼等が着用しているのは、既に春物。

中にはカジュアルドレスも混ざる。

秋に入ったところだというのに、この世界に流れる時間は実に忙しない。

当然なのだろうが、レイシャはしみじみ感じてしまう。




 服の宣伝もだが、生地の質やデザインを見せる為、それなりの演技力が重要になる。

久し振りにこの仕事が決まって以来、やる気に満ち、熱くなっていたレアール。

体作りを怠らず、体調も念入りに整え、前向きに過ごしていた。

レイシャは目の前の独特な世界を見ながら、ふとした会話を思い出す。






………


……




……


………




 「エゴサーチなんてしないでよ。

変なものが目につく」




「死んでいなくなれば精々するってやつ?」




レアールは悪戯に笑って言うのだが、レイシャは表情を一変して怒鳴る。




「ちょっと!思い出させないでよ!」




以前にブログ上で見つけた書き込みを、今やレアールは笑っている。

沢山の妬みを買いやすいのもまた、この世界で働く上での特徴だった。






 とは言え、先程の言葉を目にした当時、レイシャは激怒した。

本人を上回る勢いで泣きながら、事務所に電話をさせろと言ったところ、レアールに宥められた。




「トレンドの変化は目まぐるしい……

醜いものは勿論、ユニークでないものも次々排除されるのよ……」




「あんたはそんなんじゃないでしょうがっ…

皆…急に掌返しすぎなのよっ!」




「そういう世界よ……

だから、言ったでしょう…新しい事を考えつく貴方が、羨ましいって。

だって、新たな思考を引っ提げて挑まない限り、生き残れやしないんだから……

掛けられる篩に残れるように、頑張る……

貴方が、頑張るみたいにね…」




静かに語りながらも、彼女は間を空けてからウィンクした。

この日はストレス発散に通う、キックボクシングを通じたエクササイズ。

一汗かいた後の彼女のボディには、体作りの効果が出ていた。

思い出したくない事を口にしながらも、強い意思がそこにはあった。




「まぁでも。私だって腹が立つわよ。

奴等が攻撃するならば、私だってやり返してやりたいところねぇ」




首にかけていたタオルを、乱暴に音を立てながら取る。




「この間、色々忘れたくてアクション映画を観たの。

彼等はいいわねぇ。

私も、あんな風に戦って、嫌な奴をとことんブチのめしてやりたいところだわ……

そう…とことんね……」




珍しい様子を見せる彼女を、ただ黙って眺めていた。

僅かだが、苛立ちが鋭い目に滲んでいるのが分かる。

恨めしい。そうだろう。

そして、彼女は相変わらず言う。




「でも…でも私は弱い……

ねぇレイシャ…貴方はいつか……

私を綺麗に…強くしてくれるかしらねぇ……

心も……体も……」




「だからっ!何なのよそれっ!」




「…………あはははっ!」




悪戯な表情で、彼女は明るく笑った。




………


……










SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ