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#08. Reboot 脱出 [7]
#13. Data processing [2]
現場で止血作業がなされる中、ボートで救急隊が駆けつける。
それを目の当たりにしていたシャルは、いても立ってもおられず、外へ疾走した。
酷い豪雨の中、時折、遠雷が聞こえる。
横殴りの雨は、彼女をあっと言う間に濡らした。
全身が震え、息が上がったまま整わない。
そんな中、手にしたままの凶器に目を落とす。
先程の恐ろしい記憶が鮮明に蘇ると、首が振られ、それを後方に大きく引いた。
こんな物があったからだ。
こんな物、こんな事、消してやる。
腕は力いっぱい、前方に高々と振り下ろされた。
暗い嵐の中にそれは放り投げられ、闇に溶け込む。
雨音と共にその姿は消え、激しく波打つ漆黒の海に音も無く沈んだ。
それは隙間という隙間から気泡を上げ、闇に呑まれるように、みるみる落ちる。
沈む速度が速いそれは、まるで鉛か。
漆黒の底なしの海中に、ただ只管、流れにその身を乗せ、揺られながら消えていった。
死んだように動かなくなったヘンリーが、搬送されていく。
豪雨に身を晒しながら、彼女は体を震わせていた。
直ぐ父のノーランにも連絡し、彼もこの場に駆けつけていた。
出来事を耳にすると、彼は心底青褪め、次第にそれは焦燥に変わる。
シャルは、ビルが駆けつけなければヘンリーに絞殺されていた。
浴びせられた、常軌を逸した威嚇と怒号。
彼女の身震いは、未だ止まらない。
半ば無意識に取り出したピストル。
向けるだけで変貌は治まると思っていた。
しかし、変わらなかった。
引き金を引くつもりは毛頭無く、銃弾も込めていない。
故に、放たれるとは思ってもみなかった。
またそもそも、それがただのピストルではなくなっていた事にも驚かされている。
実際に発射されたのは、厚さも線幅も最高数値のままになったレーザー光。
出来事が、自分の行いがあまりに恐ろしく、弾みでそれを海に捨ててしまった。
最悪の事態にショックを受け、彼女は震えながらノーランに謝罪を繰り返しながら、話した。
彼は黙り続けていたが、泣きじゃくる彼女の背を慰めるように擦る。
その後、彼はやっと静かになった事故現場に向かう。
開発をするにしても、実にいい加減な管理だった。
それが自分の父、アルフである事に肩を大きく落とす。
そこへ息子のヘンリーの顔が浮かぶ。
それには首までも落とし、深く溜め息をついた。
困り事は幼少期の内だけと思っていたが、大人になってからも解消されない。
何故、こうも騒動ばかり起こすのか。
大学の中退を懇願された時に知った、虐められる生活が続いていたという事実。
ノーランには、何もかもが受け入れ難かった。
この件が知れ渡れば、仕事に支障が出る。
名声にも傷がつく。
進路の都合で海外渡航を控えるジェレクにも、影響を出させる訳にはいかない。
この施設は一時クローズし、後に運営判断をするとした。
そして警察に交渉する手立てを考え始める。
彼は、息子の大怪我をそっちのけに、只管そんな心配をし続けた。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




