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#08. Reboot 脱出 [7]
「何も変わってない…
一体、何が貴方をそうさせてるのかしら?」
途中から目を合わさず、口を開こうとしないヘンリーに、シャルは苛立った。
「どう学んできてるのか知らないけど、考えを受け入れてもらいたいのならば、まずは相手を受け入れる事と、既定通りやる事ね」
彼女はまた一冊を手に取り、適当に捲っては閉じると、数回手に叩きつける。
(…なあ……黙れよ……)
「貴方は代表になって日が浅い。
それなのに、早々に思いついた事をあれこれ捻じ込み、チームを混乱させてる。
競争相手がいて、先を越されるような切羽詰まった世界じゃないのよ」
ヘンリーは、掴んでいた1冊に力が一層加わり、震える。
「仕事を辞めるって、生活に影響する事なんだから。
冷静になってもらえないかし
彼女が言い終える前に、打撃音が部屋に響いた。
彼は、掴んでいた1冊を思い切り彼女の顔目掛けて投げつけていた。
一驚上げた彼女は顔を一変させ、制御に間に合わなかった右腕越しに、彼を震えた目で見る。
彼女のその目が、顔が、憎たらしい。
何故、お前が怯えるのか。
彼の体は、何かで操作されているように速かった。
デスクに積まれた、重みがある大量のファイルが一瞬にして床に散乱する。
大人でも運搬に苦労するそのデスクを、いとも容易く蹴り飛ばした。
一撃で位置が大きく移動したそれに、彼女は目を疑う。
だが、その時も僅か。
デスクがズレた衝撃で、別の棚から薬品サンプルが飛び出して割れ、床に飛散する。
その音と被さりながら、彼は彼女の首を両手で掴みかかり、傍の壁に大きく叩きつける。
(喋るな…喋るな喋るな喋るな喋るな喋るな!)
「喋るなっ!」
眼振と共に放たれた怒号は、短いながらも部屋に尾を引くように轟いた。
それが消え失せるが先か。
彼は急に、何かによって乱暴に彼女から引き剥がされる。
肩から腕が捻れ、背後でまるで結ばれるように両腕を折り込まれる。
肩甲骨が寄り、そのまま両腕、両手首に力が大きく加わり、上体の隅々にまで激痛が走った。
息が止まりそうになる程の締めつけは、勝手に声が漏れる。
そのまま襟首を掴まれ、後方に引かれた。
視界が大きく右に傾くと、胸部から顔にかけて再び激痛が走る。
蹴ったデスクに、何かが彼を激しく叩きつけ、そのまま圧し掛かるように抑え込んだ。
「…なせっ!放せえ!」
揺れる暗い空間に、体を揺さぶりながら吠え飛ばす。
「大人しくしろ!何があった!?」
急に飛び込む別の声はしかし、ヘンリーには届かなかった。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




