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#07. Cracking 処分 [14]






 「男の人なんて気まぐれでしょ…」




レアールは、悩み呆けるレイシャに言う。

彼が急に姿を消した原因を、必死で探っていた。

自分の発言や家に通い詰めた事が、結局嫌だったのか。

だとするならば、どうしても自分を責めてしまう。

連絡先も、職場も、そもそも何をしている人なのかも一切知らない。

名前すら結局聞けていない。

引っ越したのかと考えるが、表札が残っているからそれはないだろうと、また別の理由を探す。






「もともと誰もいなかった家なんでしょう?

そこへ急に現れたなら、急にいなくなるのも不思議じゃない……

同じようにまた、フラッと現れる…

そう思っておくしかないでしょうねぇ…」




挿絵(By みてみん)




カフェのテラスに腰掛け、風に揺れるパラソルに目を向けながら、レイシャをゆっくり慰めていた。

微風で表面が揺れる、甘いミルクティー。

レアールはそっと、疲れた目を瞬き、そこに静かに突っ伏す彼女に呟いた。




「ねぇレイシャ……貴方は…私を……

綺麗に…強く…してくれるかしら……」




「……何それ…」




妙な事を言う彼女は、今日も目立たない格好をして佇んでいる。






 もう、人気モデルでも何でもない。

ここまで身を隠す必要もないのではないか。

一時期を考えるとつい、癖で着込んでしまう。

それだけ顔を知られており、存在がバレては写真を求められた。

それに悩んでいたのだが、今はその逆で、その時の苦労を求めている。




 例えば今、この場で変装を脱ぎ捨て、己を晒したとしたら。

一体どれだけの人が、自分である事に気づくのだろう。

想像すると、身震いした。

そんな人はもう、誰もいないのではないか。

そう思ってしまった時、スカーフと帽子にまた顔を隠す。




「私はせめて……

貴方や……その彼の役に……立てたらいいな……」




彼もまた、どこか苦しそうな顔をしているとレイシャから聞いており、レアールは想像した。






 科学者の世界もまた、モデル業界に似たところがあるのではないか。

新しい考えを生み出す必要がある。

そうでなければ、生き残れない。

そしてまた彼女の場合、美しくなければ、芯や体が強くなければ、生き残れないと考えていた。




 レイシャと彼は、似た世界に身を置いている。

そして恐らく、似た経験もある。

自分はよく、不安定になってレイシャに心配ばかりかけてきた。

お互い様ではあるが、別の業界にいるレイシャは自分を気遣い、時と場合に応じて心の内を敢えて話さない時があった。




 しかし彼は、彼女と同じ科学の世界にいる。

彼と上手く行けば、彼女は寂しい事ももっと減るのではないか。

そんな事を考えて、あの晩、つい初対面にも関わらず伝えた。

その彼は今、いない。

レアールにとっても、残念な報せでならなかった。








SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。



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