[14] 1080.
#07. Cracking 処分 [14]
「男の人なんて気まぐれでしょ…」
レアールは、悩み呆けるレイシャに言う。
彼が急に姿を消した原因を、必死で探っていた。
自分の発言や家に通い詰めた事が、結局嫌だったのか。
だとするならば、どうしても自分を責めてしまう。
連絡先も、職場も、そもそも何をしている人なのかも一切知らない。
名前すら結局聞けていない。
引っ越したのかと考えるが、表札が残っているからそれはないだろうと、また別の理由を探す。
「もともと誰もいなかった家なんでしょう?
そこへ急に現れたなら、急にいなくなるのも不思議じゃない……
同じようにまた、フラッと現れる…
そう思っておくしかないでしょうねぇ…」
カフェのテラスに腰掛け、風に揺れるパラソルに目を向けながら、レイシャをゆっくり慰めていた。
微風で表面が揺れる、甘いミルクティー。
レアールはそっと、疲れた目を瞬き、そこに静かに突っ伏す彼女に呟いた。
「ねぇレイシャ……貴方は…私を……
綺麗に…強く…してくれるかしら……」
「……何それ…」
妙な事を言う彼女は、今日も目立たない格好をして佇んでいる。
もう、人気モデルでも何でもない。
ここまで身を隠す必要もないのではないか。
一時期を考えるとつい、癖で着込んでしまう。
それだけ顔を知られており、存在がバレては写真を求められた。
それに悩んでいたのだが、今はその逆で、その時の苦労を求めている。
例えば今、この場で変装を脱ぎ捨て、己を晒したとしたら。
一体どれだけの人が、自分である事に気づくのだろう。
想像すると、身震いした。
そんな人はもう、誰もいないのではないか。
そう思ってしまった時、スカーフと帽子にまた顔を隠す。
「私はせめて……
貴方や……その彼の役に……立てたらいいな……」
彼もまた、どこか苦しそうな顔をしているとレイシャから聞いており、レアールは想像した。
科学者の世界もまた、モデル業界に似たところがあるのではないか。
新しい考えを生み出す必要がある。
そうでなければ、生き残れない。
そしてまた彼女の場合、美しくなければ、芯や体が強くなければ、生き残れないと考えていた。
レイシャと彼は、似た世界に身を置いている。
そして恐らく、似た経験もある。
自分はよく、不安定になってレイシャに心配ばかりかけてきた。
お互い様ではあるが、別の業界にいるレイシャは自分を気遣い、時と場合に応じて心の内を敢えて話さない時があった。
しかし彼は、彼女と同じ科学の世界にいる。
彼と上手く行けば、彼女は寂しい事ももっと減るのではないか。
そんな事を考えて、あの晩、つい初対面にも関わらず伝えた。
その彼は今、いない。
レアールにとっても、残念な報せでならなかった。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




