[7] 1110.
#05. Error 誤搬送 [4]
#07. Cracking 処分 [14]
その晩、レイシャは夕べの彼が気になり、再び訪れた。
すると、またあのロボットが庭で動く光景が目に飛び込み、思わず声が零れる。
彼女の頭2つ分背が低いそれは、不器用に歩いていた。
その音は、辺りが静まり返っているせいもあり、よく響く。
夕べよりもどこか違う動きを見せるそれが、気になって仕方がない。
彼女は自然と、その家の柵にへばりついていた。
今晩の彼は、柵に凭れている。
その隣に並ぶレイシャは背が低い分、余計に彼の身長が高く感じた。
左手に握るリモコンは、然程念入りに操作をしている訳ではなく、テレビのリモコンのような感覚で触っている。
ロボットの移動が速くなっているように思い、レイシャは声をかける。
「ねぇ」
リモコンを掴む手は、下向きの矢印が書かれたボタンに触れる。
するとロボットは、まるで人が屈むのと同じ姿勢になった。
「ねぇえ」
彼はまた、同じボタンを数回押す。
指示を受けるロボットは、それ以上屈む事をしない。
それに納得いかないのか、彼は首を傾げて考える。
「ねぇって」
今度は、ボタンとは別に小さな突起物に触れた。
ロボットの手が動き、地面に触れる。
彼の傾いていた首は、そっと定位置に戻っていった。
「ちょっと!」
「!?」
彼女の大声が右耳を劈きそうになり、彼は激しく肩を竦め、体が左に傾く。
反動でリモコンが落ち、つい踏んづけてしまった。
どれかのボタンに当たり、ロボットが急に向きを変えて走り出すと、彼に衝突した。
それにレイシャは驚き、口に手を当てながら柵から大きく離れ、眺める。
ロボットが乱暴に蹴られる音がし、それに合わせて停止した。
彼の手には、慌てて拾ったリモコンが握られている。
暗がりに佇む彼は、昨晩同様、ジリジリとゆっくり流し目を向けてきた。
レイシャはそれに少々怯むが、柵まで再び戻る。
「呼んでるのに、ちっとも振り向きやしないのね?
その様子だと、無視してたんじゃなくて、集中?
だとしたら相当よ」
しかし彼は、またお前かと言わんばかりの表情をするだけだ。
何も言う気になれなかった。
聞こえない事など、言いたくない。
彼はそっと視界から彼女を消し、立ち上がる。
「夕べと違うわね?走ってた。
それに、下に落ちた物、その子は拾えるの?
それ、どうやって作ってるの?何に使うの?」
偉く疑問を投げかけてくるので、不思議な物を見る目で彼は振り返る。
こういう物が好きなのか、彼女は随分と目を丸くさせている。
彼は、リモコンの上向きの矢印が書かれたボタンに触れた。
ロボットがギシギシと立ち上がり、家の裏に消えていく。
レイシャは柵から爪先立ちして覗き込んだ。
それに続いて、彼も立ち去るではないか。
「ちょっと!何で何も言わないのよ!」
それでもやはり、何も言わなかった。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




