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彼女が見る携帯画面には、友人からのテキストが開かれている。
ここ最近、友人は体調を崩しており、今日はとうとう仕事を休んでしまったと連絡があった。
それに対し
“まずは体を大事にしなくちゃ。
ましてや、体が重要になる仕事なんだから”
と返信していた。
友人はファッションモデル。
以前まではランウェイに立つ仕事が多かったが、最近は新人モデルの影響もあり、その機会を持つ事が激減していた。
スタイルや見せ方そのものに魅力があると評価され、雑誌でも表紙を飾る程の人気を誇っていた。
しかし、世間の掌を返す速度といったら凄まじいもの。
体調不良の主な原因は、マンネリした表現に変化を出せない悩み。
加えて、最近ブログなどで目にするようになった誹謗中傷だった。
返事が無いまま数時間が経っている。
寝ているのかと思いながらも、心配でつい電話をしてしまった。
暗闇に点々と灯る街灯の道。
冷たい風に含まれる、周辺からの草木の香りが鼻を微かに擽る。
誰もいない砂利道には、冬仕様のマッドなレザーブーツの大人しいヒールの音に、耳元で鳴る携帯電話の呼び出し音だけだ。
“………あ…ごめん、返事…”
「ちょっと何その声!?」
電話口の友人は、酷く落ち込んだ掠れた声を零した。
寝起きでもあった様だが、それだけではないとすぐに分かる。
「すぐそっち行くから!何か食べたの!?
買い物して行くから、要るもの言って!」
友人は両親を早々に亡くしており、身内に引き取られて育った事で、自立するのも早かった。
何かあっても、いつも1人でやり遂げようとしてしまう。
抱え込む癖も強く、今のように壊れてしまうのも珍しくなかった。
まともな食事をしていないと知り、適当に買い出しをして向かうと告げた言葉に、友人はやっと普段の声を絞り出す。
“レイシャ……ありがとう……”
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




