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#07. Cracking 処分 [14]
仕上がったその晩、リモコン操作でそれを外に連れ出してみた。
下顎と後頭部が無い頭。
耳の位置にはファンの形をした金属パネル。
その隙間から、白と青の2色の淡い光が漏れる。
体はまるで、生きた骨格模型。
胸部は、肋骨の様にカーブを見せた鉄パネルで覆われている。
その中には、AI基盤が入れられていた。
そこから、四方、末端、後部に複雑に導線が伸びる。
それに2色の光が、血流のように巡っていた。
ボディ全体からは、金属骨格のシルバーを放つ。
細やかな関節の動きが見られ、移動などのアクションを起こす度に機械音が目立つ。
方向転換も、しっかり角度をつける。
久しぶりに製造をした事が快適過ぎて、あっと言う間に仕上がった。
食欲も忘れ、水分だけ慌てて摂りながら、動作確認を進める。
現状、何もかもリモコン操作だったが、一部の改造とプログラミングさえしてしまえば、自動的に指示した作業をするだろう。
しかし本当に作ったのかと、まじまじと見てしまう。
あまりスタイルが良くないこれを、何と呼んでやろうかと考えた。
(……まだ…何も無い………ゼロでいっか……)
またリモコンに触れ、前後移動をさせてじっくり改善点を分析する。
そこへ
「何?それ」
「!?」
肩が跳ね、芝生にリモコンが落ち、ゼロが静止する。
急に飛び込んだ、聞き慣れない女性の声。
ヘンリーは恐れるように、声がした方へジリジリと横目を向ける。
そこには、焦げ茶色をしたマリンキャップを被り、金髪を肩まで下ろした、年齢が近そうな細身で小柄な女性が立っていた。
庭の柵を握り、背伸びをして中を覗き込むグレーの目は、ゼロを凝視している。
この家に住み始めてしばらく経つが、こんな人を見かけた事はない。
平気で人の家の柵にへばりつき、声を掛けるとは、彼には考え難い事である。
一言も発せないまま、その女性に目を這わせて観察し続けた。
「それ…もしかして作ったの?」
彼は徐々に顔を向け、彼女を真っ直ぐ眺める。
自分に似て、どこか疲れた様子が窺える。
学生にも見えるが、書物やファイルの背表紙が大量に見える、開いたままの鞄。
医療系や、防腐処理の文言が僅かに見えるところから、どこかに勤めているのか。
「………私…何かした…?」
急にその顔は曇り、声のトーンは落ちる。
咄嗟に目を合わせた時、そこには寂寥が滲んでいるのを感じた。
彼女は柵を握る手を放し、踵をそっと返していく。
その小さな背中をつい、呼び止めようとした。
だが、踏み込めず声が詰まる。
彼女は、行ってしまった。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




