表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/145

[1]          1020.



#07. Cracking 処分 [14]






 仕上がったその晩、リモコン操作でそれを外に連れ出してみた。 




 下顎と後頭部が無い頭。

耳の位置にはファンの形をした金属パネル。

その隙間から、白と青の2色の淡い光が漏れる。




体はまるで、生きた骨格模型。

胸部は、肋骨の様にカーブを見せた鉄パネルで覆われている。

その中には、AI基盤が入れられていた。

そこから、四方、末端、後部に複雑に導線が伸びる。

それに2色の光が、血流のように巡っていた。




ボディ全体からは、金属骨格のシルバーを放つ。

細やかな関節の動きが見られ、移動などのアクションを起こす度に機械音が目立つ。

方向転換も、しっかり角度をつける。






 久しぶりに製造をした事が快適過ぎて、あっと言う間に仕上がった。

食欲も忘れ、水分だけ慌てて摂りながら、動作確認を進める。

現状、何もかもリモコン操作だったが、一部の改造とプログラミングさえしてしまえば、自動的に指示した作業をするだろう。






 しかし本当に作ったのかと、まじまじと見てしまう。

あまりスタイルが良くないこれを、何と呼んでやろうかと考えた。




(……まだ…何も無い………ゼロでいっか……)




またリモコンに触れ、前後移動をさせてじっくり改善点を分析する。

そこへ




 「何?それ」



「!?」




肩が跳ね、芝生にリモコンが落ち、ゼロが静止する。

急に飛び込んだ、聞き慣れない女性の声。

ヘンリーは恐れるように、声がした方へジリジリと横目を向ける。




挿絵(By みてみん)




 そこには、焦げ茶色をしたマリンキャップを被り、金髪を肩まで下ろした、年齢が近そうな細身で小柄な女性が立っていた。

庭の柵を握り、背伸びをして中を覗き込むグレーの目は、ゼロを凝視している。




この家に住み始めてしばらく経つが、こんな人を見かけた事はない。

平気で人の家の柵にへばりつき、声を掛けるとは、彼には考え難い事である。

一言も発せないまま、その女性に目を這わせて観察し続けた。




「それ…もしかして作ったの?」




彼は徐々に顔を向け、彼女を真っ直ぐ眺める。

自分に似て、どこか疲れた様子が窺える。

学生にも見えるが、書物やファイルの背表紙が大量に見える、開いたままの鞄。

医療系や、防腐処理の文言が僅かに見えるところから、どこかに勤めているのか。




「………私…何かした…?」




急にその顔は曇り、声のトーンは落ちる。

咄嗟に目を合わせた時、そこには寂寥が滲んでいるのを感じた。




彼女は柵を握る手を放し、踵をそっと返していく。

その小さな背中をつい、呼び止めようとした。

だが、踏み込めず声が詰まる。




彼女は、行ってしまった。









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ