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#05. Error 誤搬送 [4]

#08. Reboot 脱出 [6]






 社長の息子である事や、作業に対する質問攻めがあった事で、周囲は少々ヘンリーと距離を取っていた。

しかし、そんなも事も会話を交わす内に変わったのか、仕事の後には店に誘ってもらえるようになった。




いつか父や祖父に仕事の関係で連れ出されたか、放課後に1人で過ごしてきて以来、初めてだった。

そこで更に、酒がどういうものかも知る。

あまり飲まなかったが、どうやら自分がそれに強いという事も知り、酔い潰れた仲間を介抱する経験もした。

ここでも、何故そんなになるまで飲むのだろうと疑問が生じていたが、黙っていた。




 食事中も、その後の休息もだが、逐一確認するのは店舗のガラスに映る自分。

ちゃんと笑えているのか、話題によっては空気が重い時、不似合いな表情や態度をしていないか。

何せ、その場に馴染んでおり、浮いていないか。

そんな確認をする事がすっかり癖になった。








 部屋にやっと戻ると、仕事後真っ直ぐ帰宅する時よりも、疲労が酷かった。

結局、彼等とその時間にどんな話題で盛り上がっていたか、内容をあまり覚えていない。

女性の話や賭け事の話、武勇伝が多かったように思うが、彼等が嫌な顔一つしていなかったという事は、自分は上手く溶け込めていたという事なのか。

取った行動や言葉の反応に、間違いは無かったのか。

つまり正解だったのか。

それを誰かが教えてくれる訳ではない。

自分で、そういう事にしておこうと処理して進む。

次にまた、職場で会った時の様子で分かるのか。






 人の顔色を窺うのにかなり集中するようになり、その影響か、これまで犯した事のない小さなミスをするようになった。

注意をされるようになるのもまた、周囲ではよくある事であり、普通。

仲間に肩を叩かれ、励まされる。

それに礼を言って笑う傍ら、こんな事は以前の自分には全く無かったので、酷く落ち込んだ。




 一体いつまで続けたらいいのか。

その見通しが立たない不安は、焦燥に変わっていった。








 週末、久し振りに自宅で家族揃って食事をしていた。

だが、ヘンリーの変化に気づいていないのか、誰も反応を示さない。




 学校での出来事を、延々楽し気に喋り続けるジェレク。

それに時々笑う父と祖父。

ガールフレンドがどうだ、最近学校でやるバスケットボールがどうだ、娯楽の反面成績は不安定だという話。

高校生になって、身形も流行りに乗って奇抜になりつつある。

その口調も特徴を持ち、耳に付くのだが、皆はそれが楽しそうである。




「おいヘンリー」



「!」




父の声に驚き、持っていたフォークが落ちた。




「お前、またなのか?」




そう、まただ。

いつから呼ばれていたのか、分からない。

だから気を付けていたつもりが、結局今は、弟の謎の変化に対する疑問を頭で延々巡らせていた。

そのせいで、失態を犯してしまった。




「しっかりしろ。

そんなだから、会社でミスするんだろう」




ほんの些細な事が、父の耳にしっかり入っていた。

それに目が揺れる。

報告する程でもない、黙ってりゃ済むと仲間に言われ、肩を叩かれて安心していた。

しかし、やはり誰かが告げている。




 自分が悪いのだが、何だか馬鹿馬鹿しい。

仕事くらい、自分自身を保ってやりたい。

なのに、邪魔されてしまう。




 まだ注意され、まだ聞こえない。

こんなに色々、考えをシフトして努めているのに、まだ認められない。

その晩、食事の殆どが喉を通らず、先に部屋に上がった。








 独りは楽なのだが、その反面、悔しく、声を殺して腹を立てた。

また震えている。

動悸が部屋中に響いている。

眼振が酷い。

その影響で、吐き気まで催す。




 シャルの言う事に従い続け、職場の者と馴染めてきたのは良い。

しかしそれは、本当の自分ではない。

そんな事、1㎜どころか1μも喜べない。

有りの儘ではいけないのか。

動悸が齎す胸痛は、鋭く体を刺激し続けた。




そして、この怒りとストレスが別の形で露わになった。









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




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