[3] 1550.
#05. Error 誤搬送 [4]
#08. Reboot 脱出 [6]
社長の息子である事や、作業に対する質問攻めがあった事で、周囲は少々ヘンリーと距離を取っていた。
しかし、そんなも事も会話を交わす内に変わったのか、仕事の後には店に誘ってもらえるようになった。
いつか父や祖父に仕事の関係で連れ出されたか、放課後に1人で過ごしてきて以来、初めてだった。
そこで更に、酒がどういうものかも知る。
あまり飲まなかったが、どうやら自分がそれに強いという事も知り、酔い潰れた仲間を介抱する経験もした。
ここでも、何故そんなになるまで飲むのだろうと疑問が生じていたが、黙っていた。
食事中も、その後の休息もだが、逐一確認するのは店舗のガラスに映る自分。
ちゃんと笑えているのか、話題によっては空気が重い時、不似合いな表情や態度をしていないか。
何せ、その場に馴染んでおり、浮いていないか。
そんな確認をする事がすっかり癖になった。
部屋にやっと戻ると、仕事後真っ直ぐ帰宅する時よりも、疲労が酷かった。
結局、彼等とその時間にどんな話題で盛り上がっていたか、内容をあまり覚えていない。
女性の話や賭け事の話、武勇伝が多かったように思うが、彼等が嫌な顔一つしていなかったという事は、自分は上手く溶け込めていたという事なのか。
取った行動や言葉の反応に、間違いは無かったのか。
つまり正解だったのか。
それを誰かが教えてくれる訳ではない。
自分で、そういう事にしておこうと処理して進む。
次にまた、職場で会った時の様子で分かるのか。
人の顔色を窺うのにかなり集中するようになり、その影響か、これまで犯した事のない小さなミスをするようになった。
注意をされるようになるのもまた、周囲ではよくある事であり、普通。
仲間に肩を叩かれ、励まされる。
それに礼を言って笑う傍ら、こんな事は以前の自分には全く無かったので、酷く落ち込んだ。
一体いつまで続けたらいいのか。
その見通しが立たない不安は、焦燥に変わっていった。
週末、久し振りに自宅で家族揃って食事をしていた。
だが、ヘンリーの変化に気づいていないのか、誰も反応を示さない。
学校での出来事を、延々楽し気に喋り続けるジェレク。
それに時々笑う父と祖父。
ガールフレンドがどうだ、最近学校でやるバスケットボールがどうだ、娯楽の反面成績は不安定だという話。
高校生になって、身形も流行りに乗って奇抜になりつつある。
その口調も特徴を持ち、耳に付くのだが、皆はそれが楽しそうである。
「おいヘンリー」
「!」
父の声に驚き、持っていたフォークが落ちた。
「お前、またなのか?」
そう、まただ。
いつから呼ばれていたのか、分からない。
だから気を付けていたつもりが、結局今は、弟の謎の変化に対する疑問を頭で延々巡らせていた。
そのせいで、失態を犯してしまった。
「しっかりしろ。
そんなだから、会社でミスするんだろう」
ほんの些細な事が、父の耳にしっかり入っていた。
それに目が揺れる。
報告する程でもない、黙ってりゃ済むと仲間に言われ、肩を叩かれて安心していた。
しかし、やはり誰かが告げている。
自分が悪いのだが、何だか馬鹿馬鹿しい。
仕事くらい、自分自身を保ってやりたい。
なのに、邪魔されてしまう。
まだ注意され、まだ聞こえない。
こんなに色々、考えをシフトして努めているのに、まだ認められない。
その晩、食事の殆どが喉を通らず、先に部屋に上がった。
独りは楽なのだが、その反面、悔しく、声を殺して腹を立てた。
また震えている。
動悸が部屋中に響いている。
眼振が酷い。
その影響で、吐き気まで催す。
シャルの言う事に従い続け、職場の者と馴染めてきたのは良い。
しかしそれは、本当の自分ではない。
そんな事、1㎜どころか1μも喜べない。
有りの儘ではいけないのか。
動悸が齎す胸痛は、鋭く体を刺激し続けた。
そして、この怒りとストレスが別の形で露わになった。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




