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「言ったままよ。どこが分からなかったの?」
「………母……親……ってのは……そうなのか…」
彼女は少々間を置き、目前で棒立ちするフード姿の彼を眺める。
「あら、そうじゃなかったの?
一体どういう訳なのか、あんたの正確な情報は誰も知らない。
…そうねぇ、親はいつだって、子どもを気にかけるもんよ。
あんたが部下を気にかけるようなもの。
その子の様子や先の事を考えてる。
どこで、どうあれ。愛してるから」
彼の目は、微かに振動する。
彼女は一体、何を言っているのか。
右手が少々痙攣し始め、迷宮に落とされた気分になる。
「ヘンリー」
その声に、フードの下から僅かに視線をやる。
彼女はそっと、彼の左腕に触れた。
「トップだからって、常に気を張るのは良くない。
遠くばかり気にしてないで、部下に会ってやんなさい。
皆、あんたのそういうところも分かってるわ。
後これ、血流が悪くなってる。緩めなさい」
彼女の離れていく手と入れ替わりに、彼はその装着口に触れる。
目覚めの悪さに苛立ち、移動を決めた弾みで雑に填めたオリジナルの義手。
彼女は話すだけ話すと踵を返し、掃除機をかけ始めた。
彼はしばらく、その小さな背中を眺める。
彼女と似たような事を、補佐官や現場監督にも言われた事はある。
しかし、彼女に言われる感覚はまた違った。
表現し難いそれは、固い表情を和らげていく。
上腕に巻かれたラダーロックを緩めると、エレベーターのボタンを押し、ガレージに下りた。
………
……
…
…
……
………
気づけば冷たいコンクリートの上に座り、柱に凭れていた。
今、上腕のロックは緩めるどころか外している。
まだまだ旭は顔を出さない。
考え事をしていたせいで、煙草は短くなっていた。
火を携帯灰皿に消すと、義手を装着して立ち上がる。
定着した手順で、4台のエンジンを切っていく。
部屋に戻ろうと思ったが、少し歩きたくなった。
彼はゲートを完全に閉鎖すると、排気の臭いが残るその場を後にした。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。