表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/145

[20]         780.



#08. Reboot 脱出 [6]






 代わり映えのない日々が過ぎ去っていく。

これまでの学校生活同様、耳障りな小言や揶揄(からか)う声がうざったく、遂にそのストレスが頂点に達した。




 部屋にいながら、他の生徒の笑い声がする。

全て自分に向けられたもので、動悸と共にそれは大きくなった。




頭痛がし、ベッドから出られず、何十分も治まるのを待った。

まともに寝た気がせず、全身が震える。

目を合わせるのも怖く、俯く姿勢が増えた影響で、首も肩も痛い。




課題も会話も、上手く合わせられない。

存在を煙たがられる理由を、真っ直ぐ受け入れられない。

ただ勉強をして、早く働きたいだけだ。

そうする事が、どういう訳か苦痛でならない。




周囲は、上を向いて楽しそうにしている。

しかし自分はそうできず、息苦しい。




 酷く震える手を毛布から伸ばし、携帯電話を落とさないように掴む。

もう、限界だった。

通学して2年目になったばかりの頃、ヘンリーは初めて父に直接連絡を取り、退学を決めた。






 連絡をした晩、体は日中よりも回復しており、リビングで父と2人きりで話した。

長い時間だったそれも、初めてと言っていい。




 ポツリと角に灯る、スタンドからの電球色。

静まり返る空間には、温かいコーヒーの香りが漂っていた。

数箇所に置かれた観葉植物は、季節と共に色付き始めている。

だが今は、ライトの端に佇み、彼と同じ暗い顔をしている。




「馬鹿だな…さっさと言え。

そんなになるまで何してる」




父はそう言い、どこか探るような話し方で息子を見る。

一時期に比べて(やつ)れ、話し方も変わったところを見て、驚いているのか。

そんな、目もあまり合わない息子の様子から、彼は読み取る。




「どうせ仕事の心配だろう。

成績がずっと良い事くらい聞いてる。申し分無い。

人手が足りないから手伝え。

環境も変わるし、悪くないだろう」




そこでやっと、ヘンリーはまともに父の目を見た。






 風がやや強く、外では草木が音を立て、窓を微かに叩いた。




挿絵(By みてみん)









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ