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#08. Reboot 脱出 [6]
代わり映えのない日々が過ぎ去っていく。
これまでの学校生活同様、耳障りな小言や揶揄う声がうざったく、遂にそのストレスが頂点に達した。
部屋にいながら、他の生徒の笑い声がする。
全て自分に向けられたもので、動悸と共にそれは大きくなった。
頭痛がし、ベッドから出られず、何十分も治まるのを待った。
まともに寝た気がせず、全身が震える。
目を合わせるのも怖く、俯く姿勢が増えた影響で、首も肩も痛い。
課題も会話も、上手く合わせられない。
存在を煙たがられる理由を、真っ直ぐ受け入れられない。
ただ勉強をして、早く働きたいだけだ。
そうする事が、どういう訳か苦痛でならない。
周囲は、上を向いて楽しそうにしている。
しかし自分はそうできず、息苦しい。
酷く震える手を毛布から伸ばし、携帯電話を落とさないように掴む。
もう、限界だった。
通学して2年目になったばかりの頃、ヘンリーは初めて父に直接連絡を取り、退学を決めた。
連絡をした晩、体は日中よりも回復しており、リビングで父と2人きりで話した。
長い時間だったそれも、初めてと言っていい。
ポツリと角に灯る、スタンドからの電球色。
静まり返る空間には、温かいコーヒーの香りが漂っていた。
数箇所に置かれた観葉植物は、季節と共に色付き始めている。
だが今は、ライトの端に佇み、彼と同じ暗い顔をしている。
「馬鹿だな…さっさと言え。
そんなになるまで何してる」
父はそう言い、どこか探るような話し方で息子を見る。
一時期に比べて窶れ、話し方も変わったところを見て、驚いているのか。
そんな、目もあまり合わない息子の様子から、彼は読み取る。
「どうせ仕事の心配だろう。
成績がずっと良い事くらい聞いてる。申し分無い。
人手が足りないから手伝え。
環境も変わるし、悪くないだろう」
そこでやっと、ヘンリーはまともに父の目を見た。
風がやや強く、外では草木が音を立て、窓を微かに叩いた。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




