表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/145

[19]         1360.



#08. Reboot 脱出 [6]






 高校を卒業し、大学生活が始まった。

どこか恐れを抱きながら入学し、周囲を警戒するばかりの日々。

高校時代、体の異変が顕著になって以降、ヘンリーは変わった。

しかし、成績を上位に収め続け、目立っている部分は相変わらずだった。






 ある時、バイオサイエンスの講義で意見を問われた生徒の返答に、教授が具体性が無いと指摘する。

故に、その他数名に尋ねていくが、最終的にヘンリーに答えを聞かれてしまった。

そうする事で視線が集まり、嫌な空気が生まれる。




 彼は、どの講義も必ず最後列の端に着き、最低限の発言しかしなくなっていた。

講義前に、教授にわざわざ自分を指名をしないように頼む事までするのだが、この教授にそれをし忘れており、溜め息をつく。




 教授が返答の中に求めているのは、個々の微生物が持つリスクなどの特徴だろうか。

そう予測し、それらを上げながら実験に取り組む際の注意を淡々と述べる。




予想は的中か。

教授の顔色は一気に明るくなり、やっと次の話題に進んだ。






 講義が終われば颯爽と出ていくのも、1つの決まり。

だが、この時はそうは行かなかった。




「嫌味ったらしい。

科学者の金持ち坊ちゃんはこれだからうぜぇ。

どうせ俺等の事バカにしてんだろ?

わざわざ貴重な時間を使ってまで見下しに来るとは、ああありがてぇ!

時間の使い方も贅沢か!」




始まった。

講義終了後、大きな小言が耳に飛び込み、それに勝手に鋭利な目を向けてしまう。

傍を通過した生徒が怯み、足早に教室を出た。

彼の睨みに、小言を零した学生が食ってかかる。




「お前がいるから教授だって深堀りすんだ。

本当ならさっさと先に進めただろうによ。

大体、そんなもんわざわざ記憶してなくたって、調べながらやりゃあ済む話だ」




互いに睨み合う中、ヘンリーの目がジリジリと逸れていく。




「……講義に深堀りはつきもんだろう……

それが無いなら…本だけでいい……

講義自体は…物足りなくなるだろうけど……」




相手は鼻で笑い、まだ何か言おうとしていた。

その前にヘンリーは立ち上がると、その場を後にした。






 次の機械工学の講義では課題が出ていたが、その前に担当教授に呼び出されており、先に研究室へ向かった。




 入るなり明るく声をかけられ、適当に挨拶を交わすと本題に入る。




「実は出してもらった課題なんだが…」




突然表情を曇らせる教授に、彼は首を傾げる。




「ああまぁ…仕組みも良いし相変わらず圧倒される。

ただ…他がついていけない」




それは、金属アームの設計図。

いつか、父の職場を見てぼんやりと思い浮かんだ。

実際にロボットを使用するならばと、理想を実際に描いたものだった。

仕分けや、簡単な部品の填め込みに効果を発揮する事を目指したもの。

端に並べ立てられた数式や作図そのものは、上の学年が作製したものに等しいか、越えている。




「クラスで教えていない事が含まれすぎだ。

口頭説明するにしてもこれだと授業になって、発表するという目的から逸れる。

ハードルを下げてくれ。じゃないと受け取れない」




実に綿密な仕上がりになっているそれを、簡素化する。

その考えが浮かばず、そのまま教授に、何処の何を削るべきかを全て聞き出し、修正した。

耐性率、材質の特徴、電力消費量等を事細かに明記していた。

あらゆる発見と可能性を論理立て、考えうるデメリットに対する策までも叩きだす。

それは、幼少期から更に拍車がかかっていた。









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ