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#08. Reboot 脱出 [7]
祖父と父の血が濃く受け継がれたヘンリー。
這うように通った高校生活で、彼は随分変わった。
ジェレクは2人の職業に興味を示してはいたが、兄程の執着はなかった。
そんな兄弟の圧倒的な違いは、世間を知っているかどうか。
一般的とされるコミュニケーション能力。
友達の有無。
そして、時間の過ごし方だった。
髪や髭は白髪を占め、すっかり歳をとったアルフは、仕事場でヘンリーの成長をゆっくり思い返していた。
彼は相変わらず、小さい頃からの夢を抱き続け、それを叶えようと進んでいる。
アルフは、デスクに広げていた用紙に触れる。
それは本職とは別の、レーザー光に関する資料。
その傍には、幅30㎝程の黒いプラスチックケースが置かれていた。
2箇所のロックを開けると、現れたのは黒いハンドガン。
科学者の繋がりでは、銃器設計者の知り合いもいる。
元々、息子のノーランからの影響もあるが、数々の視点を持つ仲間から刺激を受けやすいアルフは、薬品以外の製品開発を進めていた。
片手間に行われていたそれは、新たな銃器開発。
歴史が長いレーザー光をより活用すべく、軽量かつ銃弾を不要とする理想を実現させる計画だった。
全体が黒いそのレーザーピストルのサンプルは、オリジナルなだけあり、変わった部品が付いていた。
片側には数字が付いた直径3㎝程のギアが取り付けられ、光線の横幅調整ができる。
反対側には、フェーダーのような摘まみが付いていた。
光線の厚さ調整ができ、数値は、ボディに沿って横に設置されたゲージで表す。
トリガーを引いている時間の長さによって、持続的か単発的な発射になる。
しかしアルフは、その資料から目を離すと、窓の向こうに広がる海を眺める。
ここ最近、体調を崩す事が増えた。
もう少しやれるだろうが、年齢を考えると、引退に向けた段取りも真剣に考える必要がある。
大きな望みだった、水上要塞のような海洋バイオテクノロジー研究所の設立。
それを叶えた今、次に大々的な何かをやり遂げる事は、体力からして現実的でないと感じている。
ただ、夢だけはいつも大きく持っていたかった。
製品にならずとも、それに向けたデータを未来に残す。
そんな生き方もまた、悪くないと考えていた。
引退となると後任が必要になる。
常々傍で力になってくれているシャルが過る一方、彼は、ヘンリーの幼少期の言葉を思い出していた。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




