[17] 730.
その帰り道、バスにも乗らず徒歩で帰路についた。
陽が落ちるのが早くなり、夕方は薄暗い。
通り道の街灯がとても綺麗である筈が、目は別の所に向いている。
焦燥と共に、勝手につく溜め息と舌打ち。
学校という場所に、ただただ恐怖していた。
しかし先を考慮すると、大学に行かない選択は厳しい。
大学こそ、大人の環境である。
こんな子どもじみた出来事は、今度こそなくなるだろう。
つい、橋の手摺りに顔を突っ伏し、考え込んだ。
点々と点く街灯が、夜を照らす準備をし始める。
時折真下を通過する小型客船からは、僅かに賑わう声がしていた。
両手が勝手に震える。
風は冷たいが、寒い訳ではない。
ある日を境に、気温とは関係無く震えが生じるようになった。
それに吐き気も加わっている。
今日は午後からずっと続いており、それに堪える事にも疲れていた。
これまでとは違い、不定期だがその症状は時折出る。
もう直、環境がまた変わる。
仕事に就く事だけを目標に、このまま突っ切ってやると、あらゆる過ごし方を頭で巡らせ始めた。
その間も、震えと気分不良は絶えなかった。
季節の変わり目につき、風邪を引いたかもしれないと勝手に判断し、やっと顔を上げる。
彼は、手摺りを掴みながらフラフラとまた歩き始めた。
家に着くと、いない筈のシャルがジェレクとリビングで立っていた。
「何処行ってたんだ!?携帯鳴らしても出ねぇし!」
ジェレクが目を見開き、声を張る。
ヘンリーはその反応を、すぐ理解できなかった。
無言で呆れるシャルに目を向けてから、時計を見る。
8時前だった。
つまり2時間近く、橋の上で突っ伏していた事になる。
その晩、高熱が出た。
帰宅後、何も食べる気になれず横になると、延々、学校から抜け出せない夢を見た。
それに限界がきて、夜中に嘔吐を繰り返した。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




