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#08. Reboot 脱出 [6]
これを機に変わり者であると噂が回り、それは結局訪れた。
全てを見透かされているような気がする口の利き方を恐れ、誰もヘンリーに寄りつこうとしない。
声をかけられたかと思いきや、妬み故の下らない攻撃として、段差から蹴り落とされ転倒。
数箇所の軽い打撲を負った。
帰宅途中。
自転車を漕いでいると、ブレーキが効かず咄嗟にサドルから飛び降り、地面に着地して止まった。
幸い、坂を下る事はなく、事故は免れる。
こうなるまで、ブレーキワイヤーが切られている事に気づかなかった。
その翌日、その件を職員室に話しに行った。
名を伏せた状態で、其々1限目のクラスで一時的にホームルームを設け、それは注意喚起を含めて共有された。
そして、犯人はあっさり職員室に現れる。
同学年の女子生徒で、酷く目を腫らしていた。
「あんたのせいでっ…だってあんたがいるからっ!
ちっとも成績が伸びないしっ…
親に怒られてばっかだしっ……
いなくなればいいって思ったのよっ!
もう毎日毎日っ…家に帰るのが嫌なのよっ!」
これまで見た事がなかった彼女の存在。
ヘンリーを越えられない事に腹を立て、事故に遭えばいいと思い、実行したと言う。
最悪の場合、死に至る可能性も十分にあった出来事。
教師が叱る横で、彼は溜め息をついた。
見ず知らずの人間に、いなくなればいいと思われている。
それは重く体に圧し掛かった。
解決したと思いきや、別の日に今度はタイヤの前後がパンクしていた。
そこには明らかに刺し傷が残されており、故意にしたものだとすぐに分かった。
この行為が一体何と関係しているのか理解できず、毎日が億劫になった。
(今…越えればいい……)
立て続けにトラブルが起きた為、バス通学に切り替えた。
家に連絡を入れられたり、またホームルームで共有の場を設けられるのも、うんざりだった。
その為、学校にこの件は言わなかった。
虐めの質はこれまでと違って重く、危険を伴うものが続く。
中学の時に起きたロッカー荒らしがまた生じ、使用を止める為に片付けていた時の事。
私物ではない、見るからに高価な腕時計が入っており、手に取った。
それを写真に撮られ、泥棒だと濡れ衣を着せられる羽目になる。
教師にも、挙句の果てには警察にも話を聞かれる始末だったが、淡々と誤解を解き続けた。
騒ぎが起きた数日後、その時計の持ち主は上の学年の生徒の物と判明する。
そのクラスメートが、悪戯でヘンリーのロッカーを壊して仕込んだと認めた。
解決したのは良いが、何も安心できない。
学校で成績が抜きん出ている。有名人の息子。
だとすれば、見ず知らずの者に狙われる事は、仕方がないというのか。
顔見知りが少なかった高校。
しかし、噂は風にのってやってくる。
これまでの虐め経験で揶揄われる事や、弟のジェレクの存在も話題にされた。
ヘンリーとは真逆の性格である事から、成績は低く、反発するところから、凶暴的だと罵られた。
自分自身に対する攻撃は、耐えればいいと思っていた。
しかし、家族となると訳が違う。
その時は必ず、顰め面をして言い返してきた。
「凶暴的なのは果たして、どちらかな。
あいつは確かに、反抗する。
大事なものの為ならば、傷つく事を恐れない。
強いし、賢いさ。
人を馬鹿にする君達とは、比較にならないよ」
家族それぞれに、素晴らしい素質がある。
共に過ごす時間がほぼ無くとも、各々の場所で力を発揮している。
その邪魔だけはさせたくなかったし、守りたかった。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




