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「友達がいないって…
まだそんな事言ってるの?もう中学よ?
あっと言う間に高校。
ヘンリー、お爺様からもずっと言われてるの、分かってないようね?
自分がしたい事ばかりじゃなく、学校では学校でしかできない過ごし方をしろって。
ジェレク見て御覧なさい」
いつからか、こう早口で叩くように言葉を放つところが、嫌になっていた。
「将来就きたい仕事があるんでしょう?
それに向けて頑張るのに、勉強だけでは駄目って話してるわよね?
お爺様やお父様を見て、どう?
沢山の人とやり取りしてるわよね?
その経験は、いつから積んできてるの思うの?
人との接し方は、学校を卒業して就職するなり急に得られる能力じゃない。
グループアクティビティとかは?
どうしてるの?」
初対面から、シャルの接し方は時を重ねるごとに変わった。
母親の代わりと言われるが、ヘンリーやジェレクはそもそも、母親がどういうものかを想像する事が難しい。
彼女が母親であるならば、この接し方はどうも受け入れ難い。
ヘンリーは、そう感じるようになっていた。
これもまた、主張すれば反抗期だなんて言葉で横流しにされる。
反対に、そんなところを殆ど見せない弟が不思議でならなかった。
それに、気づけば比較される事が増えており、それもまた苛立ちの原因になっていた。
「もういいだろ別に!」
その感情はつい、言葉に乗るようになる。
「よくない!答えられないって?
そんな事で一体どうやっていくつもり?
言っておくけど、お爺様やお父様、私がやる仕事は、やりたい事だけに目を向けておけば就ける職業じゃないわよ」
これは、まだ高校生にもなっていない子どもとの会話である。
普段から、先々の事について話す。
何も珍しい事ではなかった。
だが、彼女の態度や話の内容も含め、中学に入ってから過敏になっている。
どんなに母親の代わりを務めようと、シッターと同じで赤の他人。
疲れたヘンリーは、ある晩、父に相談をした。
父は手にしていた新聞を、どこか仕方なく畳んで息子を向く。
少々疲れを滲ませる顔は、背後で灯るスタンドライトで暗くなっていた。
耳に若干被る、黒に近いブラウンの短髪を搔きながら溜め息交じりに言う。
「だが考えろ。
家でこうして生活できてるのは、シャルのお陰だろう?
彼女のような存在は、まだ成長期であるお前やジェレクには必要だ。
それに、前のシッターが気に入らないと言ったのはお前じゃないか。
シャルは父さん達の大事な知り合いだ。
シッターに任せるより、ずっと安心できる」
(彼女がいいなんて……頼んでない……)
この相談の後、祖父や父が彼女と話し合っている様子は、見受けられなかった。
終いにはいつも通り、彼女の言う事を聞けと言われる。
しかし、ジェレクはそこを上手くコントロールし、難なく過ごしていた。
それもまた、ヘンリーには理解ができなかった。
ごねる事をしないジェレクを見習えと、親達は言うのであった。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




