[8] 1140.
#01. Access 搬送 [6]-[8]
#06. Please wait 決定 [4][17]-[19]
#10. Tracking 再回収 [11]
#13. Data processing 再び [2]
その人の性格を反映したいとレイシャは言う。
レアールがその例だろう。
だが、彼女と違ってそれを上手くできる自信は無かった。
今、手掛けやすい事と言えば
(…笑…う……?)
表情。
そのワードが浮かんだ途端、手が近くの人体図鑑に伸びた。
広げられたページには、人の顔の造りが細かく示されている。
ゼロの量産と並行して、ヘンリーは新たに顔面パーツを考え始めた。
そこへ、携帯電話が鳴る。
「1人。貴方に似た有能者がいる。会ってみる?
見た目は最悪だけど」
意味が分からず、首をノロノロと傾げ眉を顰めた。
聞くところによると、複数名と殴り合っていたが、今はその1人を残して立ち去ったと言う。
ここ最近、レナードがその彼の後をつけて調べていた。
複数の会社を転々としており、現在は無職。
暴力的になる理由からトラブルを招き、傷害罪があった。
コンピューターに触れていた機会が多く、プログラミングの知識があるようだ。
いつか赴いた廃退地区でなら、想像がつきやすい。
しかし今2人がいるのは、元々自分が住んでいた街。
そこに合わさる、ジェレクの件があった夜、道ですれ違った怪我を負った者。
拓けた世界でも、そんな状況にある人間がいるのは自然か。
そんな事をぼんやり考えている間、レイシャから聞こえているのかと声を張られる。
ヘンリーは短く返事だけをするが、その先の回答をする気になれなかった。
人と上手くいかなかった経験しかない。
レナードは現状馴染んでいるが、それでも未だ、ゼロで大半を補いたい気持ちはある。
気づけばまた、ホワイトボードの数式を見ていた。
それを目だけで追いながら、やっと放ったのは一言だけ。
「………治療……してやれ…」
ボートに医療キットを常に積んでいる。
それで適当に対処し、別れるものと思っていた。
しかしその怪我人は結局、研究所に運ばれてきた。
向こうで話している最中、気を失ったと言う。
搬送されてきたのは男性で、全身に負った打撲は酷く、所々で縫合処置まで行った。
目撃した現場では、どうも恐喝をされていたようだ。
そんな彼の滞在は数日続き、もはや入院だ。
元被験者用の部屋を与えられた彼は目覚めると、治療を受ける日々の中、至れり尽くせりの生活が続く事に動揺していた。
レイシャとレナードは、傷病人に対する当然の接し方をしているだけだった。
だがその彼にとっては、非常に大事にされているように感じ、恐怖すら感じていた。
病院へ通う事もできない程に、切羽詰まっていた。
それでも、怪我と心の傷だけは増えていく。
正直、レイシャ達が治療をすると声をかけてきた時は、ほっとした。
その一方で、想像し始める。
こんな妙な自分に近づく彼等も、訳ありだろう。
出没した時間帯や、黒革のコートや黒パーカーといった、全身を黒で占めた格好。
何か、察しがついた。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




