[5] 1040.
#04. Analyzing 回収 [5]-[7]
#05. Error 誤搬送 [19]-[21]
#13. Data processing 再び [2]
ヘンリーが目覚めたのは2日後だった。
レイシャとレナードは共に彼の部屋におり、呆然とする様子を眺めている。
しかし、彼はなかなか口を開く事はなかった。
その傍ら、レナードは、部屋のデスクに山積みになっている数式の用紙に釘付けになる。
そこへ、レイシャのふとした息が静寂を切った。
「今日は、彼にボートの操縦を教えるわ。
後、前に言ってた、人を増やす話、1つ当てが見つかった。
彼が以前いた所に、医療集団がいたとか。
まぁ、接触できるかは分からないけど…
近づけそうなら行ってみる」
ハッカー集団の一員だったレナードは、一般と呼ばれる地域や、廃退地区の数々を転々としていた。
行き先で遭遇した事があるその医療集団は、通常通り免許を取得した優れ者達だ。
そんな彼等が何故、歪んだ生き方をしているのか。
それには幾つかの原因が考えられている。
以前の仲間が入手した情報や、レナードの大まかな調べによると、その集団の中には、目に留まる傷を負っている者も多い。
話によると、患者からの攻撃によって得たものもあるそうだ。
その1例は、扱っていたシリンジが患者の手によって勤務医に刺さるというトラブル。
その影響で障がいを負ったり、感染症を発症する事があった。
しかし、病院が影で患者と示談し、警察に通報せず処理されたと言う。
その他、検査を受診する前の患者の暴力行為が生じたが、警察が来ても医療行為中のせん妄と判断され、事件として取り扱われず処理をされた事。
病院では労働災害の申請もさせてもらえず、責任を押し付けられたといった内容だ。
また、医療事故の濡れ衣を着せられた経験。
誤解が誤解を招く事で出された、医業停止命令。
納得がいかず、命に従わないまま医療行為を続けた事で、更に問題視された事。
それらの周りには、指導医による完全放置や、立ち会っていた者による見て見ぬ振り、言わば虐めが多く関係していた。
其々が勤務していた院内で起きたトラブルの殆どが隠蔽され、関係者や警察、労働基準監督署が碌に取り合わない事実が存在している。
相変わらず特別な反応を見せないヘンリーだが、レイシャはこれまでの様子から、彼が聞こえていると判断した上で話している。
彼は無言のまま、レースカーテンがかかる窓の外に目を向けていた。
光を受ける希少な色の瞳は、僅かな振動を見せる。
彼女が部屋を後にすると、レナードがデスクの椅子に座ってヘンリーに声をかけた。
だが反応しない。
そこで、以前にレイシャから聞いていた事を思い出す。
こんな時は、体を揺らすか叩くかしろ、と。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




