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#07. Cracking 処分 [6]

#08. Reboot 脱出 [7]






挿絵(By みてみん)




 そこは薄暗い路地裏。

ヘンリーの姿が見えなくなるのは怖かった。

この距離にいたくなく、レイシャは2人の声が聞こえる所まで接近した。






 小声での会話は、低く緩やかに変化してしまったヘンリーの声など無いに等しく、ジェレクの声だけが部分的に耳に入る。




「仕事するまでの分だけじゃん。

親父キレてっから言えねぇし」




その言い方からすると、最後に会った日から今日までの間に、父に隠し事がバレたのか。

レイシャは2人の歳の差も聞いていない。

見た目のギャップのせいで、ジェレクはかなり年下に見えるのだが、そうでもないのか。




「いや、社長してたくせにケチか!

それとも何だ、詫び金で飛んじまって貧乏?

あの施設売っちまえば増えんだろ?さっさと片せよ」




家族とは思えない態度に、レイシャは耳を疑う。

兄弟こそ助け合う仲でありたいものだが、ジェレクの発言は突拍子もない事ばかりで、怒りに震え始めた。




「腑に落ちねぇって面か。

そーいや事故の話聞いたけど、相変わらず首絞める癖はご健在らしいな!

あああの女は喧しかったぜ!

それには同意してやるよ。

けど、ムカつくからって首絞めるとか、流石に餓鬼じゃん!

馬鹿だろ!

あん時となーんも変わってねぇんだな。

俺も被害に遭ったし、とことんお前がこえーわ!」




暗闇からは甲高い馬鹿笑いが聞こえ、レイシャは堪らず乱入した。






 彼はそもそも、殺しをするような人ではなかったのだ。

そうなる前にどうして、何とかしてあげられなかったのか。

込み上げる激しい悔いに焦燥する。

今すぐうざったいそいつをその場から追い払うべく、咄嗟にジェレクの腕に掴みかかり、強引にヘンリーから引き離した。




「とっとと消えて!耳障りだわ!

あんたみたいな奴、家族でも何でもない!

引っ込むのね!何も知らない癖に!」




気が高ぶり、声を荒げながらつい、彼を引っ叩く。

これでも抑えている方だ。

痛みに静まるジェレクはしかし、彼女を睨む。




「ってぇな!何だぁ、ああ!?

何も知らねぇのは他人のてめぇだろうが!

そっちが引っ込め!話しまだ終わっ




ジェレクが言い終えるまでに、ヘンリーは彼の胸倉に掴みかかる。

互いの立ち位置が入れ替わり、ジェレクは激しく壁に叩きつけられた。






 被害、事故、シャル、首を絞める。

頭がイかれるには十分過ぎる条件だ。

それらから連想される事は決まっている。

胸に生息する何かが牙を剥きかけているのを、歯を食いしばって堪えた。

しかし目は血走り、瞼を失っている。

こいつが憎くてならない衝動に、駆られ始めている。




「来てヘンリー」




それでも彼は、掴んでくるレイシャの手を激しく振り解く。

眼振を引き起こす中、ポケットにたまたま入れていた僅かな札束を、ジェレクの口に捻じ込んでやった。




「失せろっ………

俺はっ……お前をっ……知らないっ……」






 無人の建物の隙間とは言え、誰が耳にしているかは分からない。

これ以上声を上げるまいと、手持ちの分だけを渡し、縁を切るようにジェレクを道の方へ突き飛ばした。






 兄弟がいない事にしている。

その言葉もまた、忘れられない。

ならばこちらも、いないものとして扱って然るべきだ。

威嚇の眼差しを向けながら、ヘンリーは横たわるジェレクに更に接近する。









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




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