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#08.Reboot 脱出 [7]
しんと静まるところに、シャルが切り出す。
「海の生き物が好きなの?」
「好き。
海洋植物も微生物も、プランクトンも海も船も全部好き。
でもまだあるよ。
父さんが電化製品作ってる。
工場に使う機械とかも。
それも好き。
別の会社で使う機械は、でっかいロボットみたい。
製品製造技能士とか、プログラマーとかいる。
機械組立工も技能設計士も。
鉄を溶かして形を変えて、部品を作って組み合わせる仕事とか、できた部品を売ったりもしてる。
それもやりたい。
ねぇじいちゃんの会社の人?じゃあ薬作ってるの?
実験もしてる?」
目を丸くするシャルに、アルフとシッターは面白がる。
子ども達は首を傾げた。
大人達が笑う理由が、さっぱり分からない。
ヘンリー・クラッセン。
彼に与えられていた図鑑は、高学年に向けたものだった。
現段階では未だ習っていない、理解が難しい筈の語句が沢山載っている。
しかし彼は、周囲の大人に質問したり、辞書で調べて必ず読み解く。
言葉に限らず、知りたい事はとことん調べ、試し、結果を知りたがる傾向にあった。
そこが実に科学者のようで、教師や、時に対面する父の職場の人にも関心される。
工業技術を持つ父の仕事に関する知識も多く集めており、子どもながらに作る真似事をして遊んでいた。
高レベルのものや大人が着手するものに、彼は自然と惹かれていく。
しかしそれが、彼の同級生にとっては不思議でならなかった。
彼の考えや発言が理解できず、非常に変わり者に見えてならない。
「ねぇ!大きくなったらじいちゃんの研究所に行く!
僕も薬を作って人を助けたい!
あと便利な道具も作って、皆を喜ばせたい!
いいでしょ!?」
「ああいいさ。けど大変だぞ。
勉強を沢山しないといけない」
「知ってる。プランクトンでしょ?
植物プランクトンは、光合成して二酸化炭素を吸収するんだよ。
栄養価がすごい高くて、食べたら元気になる。
栄養補助食品にもなるって。
スピルリナっていう藍藻類の1つは、タンパク質とかビタミンとかミネラルとか、いっぱい栄養素があるんだって。
消化吸収率も高い。
あと、バイオ燃料にもなるって書いてた。
燃料っていう大きな区分で捉えるなら、人間の為の燃料って意味も含まれそうだよ。
ああ!
そう言えばさ、クラゲもプランクトンの一種なんだって!
じいちゃんは知ってた?」
友達や弟が好むものに関心をほぼ持たず、1人で沢山の本を読み、知識を得る事が心底楽しい。
そして得た知識を自由に口にし、感動したり、新たな疑問と向き合ったりする事が生き甲斐だ。
だが、それはあくまで興味を持ったものだけに限られていた。
周囲顔負けの能力を発揮する傍ら、自分の世界に没頭する彼は、集団行動などの人とのコミュニケーションが上手くいかない。
誰かと一緒に遊んだり、話したりする事を殆どしない。
その件で、学校から連絡が来る事があった。
しかし、有名人である父と祖父は常に多忙であり、その返答も淡々としたもので、シッターを仲介するばかりだった。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




