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[7]          1190.



#11. Almost done 実行 [15]

#12. Complete 細胞の記憶 [1][3]






 数秒、互いに睨み合いが起きた。

そこへ




「“てめぇまともな働きできねぇなら出てけ!”」




カウンター脇にある奥の部屋から漏れた怒号に合わさり、人が激しく床に投げ飛ばされた。

オーナーの真横に横たわる彼は、あの青年だ。

ヘンリーは無言のまま、鍔の下から突き飛ばした男に鋭利な目を向ける。




 オーナーはすぐ、青年を突き飛ばした仲間に止めるよう怒鳴った。

接客中だという理由だったが、その後に零れたのは、向こうでやれという指示。




 倒れた彼は襟首を掴まれ無理矢理起こされると、奥の部屋に再び連れていかれる。

その最中、更に聞こえたのは暴言ばかりだ。

役立たずや、まともに取引をしろ。

いい加減ハッカーとしての腕を磨け、とも。




「“我慢しろ。もうじき新入りが来る”」




オーナーの発言からして、その青年は解雇になるという事か。

そこへ横に立っていた仲間が言う。

ハッカー集団に腕が無いと突き放された奴ならば、仕事にならなくて当然だろう、と。






 「放せよ!」




自分と同じ言語で抵抗する青年の声に、ヘンリーの目が痙攣する。

何が起きているかは分からないが、奥から激しい物音がする。

これが当たり前の地区かと、視線をカウンターに泳がせた。

そうしている内に、支払えないのならここで働けと、オーナーが馬鹿にしながら声を上げ始める。

ヘンリーは首を傾げ、オーナーの背後に並ぶ銃を見渡した。




先程自分が撃ったものはまだ、元の位置に戻されていない。

その空いた棚の値札を見て、瞬時に合計する。




「“…………弾は幾らだ…”」




何を言い出すかと顔を歪めたオーナーに、ヘンリーは、先程自分が触れた銃とその弾を余分に買うと切り出した。

そして




「“あの子も…よこせ……”」




人身売買は他所でやれと返された時。

ヘンリーは手元に置かれていた先程のピストルを取り、左手でオーナーの胸倉を掴むと、激しく後方へ突き飛ばした。




 その衝撃音に、奥にいた仲間が青年を放置して駆けつけ、すぐ横に立っていた仲間は凍りつく。




 ヘンリーは目を鋭くさせたままカウンターを乗り越え、半ばへたり込むオーナーを更に左手で立たせる。

素早く右手のピストルを左に持ち替え、オーナーの口に捻じ込んだ。

右腕は横向きに、オーナーの首に押し付ける。

オーナーは銃口を噛み、震え上がった。




「“弾と…銃と…あの子を…よこせ……

それで妥当だろう……”」




横からは仲間が、殺すなと必死に懇願しながらヘンリーに従い始める。

オーナーも青褪め、唾液を零しながら激しく頷く。




 準備が整い始めたところで、ヘンリーは銃口をオーナーの口から抜くと、カウンターにそれを戻す。

オーナーは、抜かれていたマガジンがそこに佇んでいた事に安堵した。




 後にまともな額を提示されたのだが、何も言わずそれを払い除け、纏められた武器を持ってさっさと退室した。








 日はすっかり落ち、この地が一層闇に染まっている。

愚かな衝動買いに溜め息をつき、左手に上手く働いてもらいながら運搬した。









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




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