[4] 1460.
#05. Error 誤搬送 [19]
#11. Almost done 実行 [15]
#12. Complete 細胞の記憶 [1]
#- Shut down
幸か不幸か。
これも見事に手に入ってしまった。
翌日、改修と清掃に早速取り掛かるとまで言われ、その確認と契約をすべく、滞在を余儀なくされた。
ここにも予め、契約者が直に変わる予定である事を告げた。
場所や築、造りからしてそう高くつく事はなかった。
取り壊しの検討をされていた所であり、買い手が見つかり相手は有り難い模様。
支払える分だけ済ませ、残りは追々片を付ける。
貸家として扱い、管理を誰か雇い、人の出入りを発生させるように段取りする方向だ。
タスクがあっさりクリアしていき、気付けば体の怠さは回復している。
素直に戻ってもよかったが、まだ日が沈む前で明るい。
西日が眩しく、キャップの鍔を少し下ろすと、脇に広がる地域が気になり目を向けた。
得意先で聞いた話だと、その先に廃退地区がある。
ただの怖いもの見たさ、ではない気がする。
何かは分からないが、足は自然とそちらへ向いた。
20分程歩いている内に、そこは直ぐに分かった。
恐らく地域の区切りか。
見るからに衰退した、だだっ広い薄汚れた地が目に留まる。
その光景は、まるで海岸を思わせた。
手前はまだこちらに馴染んでいるように思え、明るい。
だが、奥へ目を向ければ向ける程、そこに光が射す事はなく、闇の濃さと深さを増していく。
表現し難い何かが、鼓動を速めた。
ここに似た者がいるのかと、足は進んでいく。
いつからか当たり前になった、真っ黒な容姿。
黒のキャップを目深に被り直すと、目だけで辺りを見渡した。
入るなり、一気に臭いと温度が変わる。
地面の色も段々と濃く、湿り気を感じるようになった。
やけに高い建物が多く、空気の循環が悪い。
電気が通っている家があるとなると、そこまで貧困でない者もいるのか。
初めに全貌を見渡した通り、奥へ進めば進む程、その実態は深まる。
酒に呑まれ、濁声を上げる者。
地面でそのまま眠る者。
まともな服装をしない者。
それとは真逆に、自分と同じように書物に目を通す者。
何かを地面に書いている子どももいる。
信じ難いのが、合間に聞こえた微かな銃声。
一体何かと振り返った先で捉えたのは、小さな射撃場。
ドアの開閉と共に音漏れしたのか、地下から上がってくる客人が過ぎ去るのを見届けた。
そこへすれ違ったのは、ラップトップを持つ、見るからに寒々しい薄着の青年。
履物も朽ちており、着替えもないのだろう。
綺麗と呼ぶには程遠い服装だった。
その彼は、階段を下りて地下通路に消えた。
ラップトップを抱えていた影響か、どこか浮いて見えた彼が気になり、その階段につい足が進む。
地下扉を開けたそこは、亀裂が入った灰色のアスファルトの空間。
誰もいない、数枚の防弾パネルで区切られた立ち位置。
的は新たな物に交換されていた。
硝煙と鉄の焼け焦げた臭いが籠る、薄っすらと煙たい空間に佇むカウンターに、やっとオーナーらしき男を捉える。
見慣れない顔だと切り出してくる背後には、数種類の銃が立てかけられていた。
販売もしているのか、値札が下がっている。
いつか、話題作りの為に数本観たアクション映画。
そういった作り物の世界か、戦場でしか存在しないと思っていた。
だが、そう思った矢先にレーザーピストルの存在が過る。
「“大丈夫かあんた。
悪いもん吸ったみたいな顔だ”」
発言とは逆に、全く心配する様子のない悪戯な笑みを見せてくる。
陳列する武器を目にした事で、封じていた事件の記憶。
それにより、顔色が変わったところを突いてきたか。
「“後戻りなし。とっととやれ”」
突き出されたショットガンのバレルに、鉛の光が細く這う。
ヘンリーは渋々、それを握った。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




