[13] 820.
睨め上げてくるジェレクに、ヘンリーは冷徹な目を向ける。
そこへ店舗のドアが開き、駆け寄る音がした。
レイシャはすぐさま、ジェレクをヘンリーの肩から大きく引き離す。
急な事に動揺する彼は、彼女を振り返り、しばらく見つめた。
「悪いわねぇ。急いでるからどいて」
「え、何?女いんの!?冗談だろヘンリー!」
「!?」
レイシャは驚き、咄嗟にヘンリーを振り返る。
そのまま目の前の2人を目だけで往復し、顔を曇らせた。
そこへ再び、ジェレクが近づく。
「お姉さん大丈夫?
こいつの歴史ちゃんと聞いてる?碌な事ねぇぜ?」
「誰よあんた…」
「ただの知り合ーい」
途端、ヘンリーがレイシャの腕を掴み、足早に船着場まで向かって引っ張る。
逃げる事に必死になる彼の目は、瞬きも忘れ、血走っていた。
街灯がない通路の闇に消えゆく2人を、ジェレクが追いかけてくる事はなかった。
研究所に戻って数日。
父の職場から繋がる仕入れ先とコンタクトが取れ、資材が手に入った。
ヘンリーは憑りつかれた様に延々と作業に没頭し始める。
そうなると必ずと言っていい程、飲食を忘れる。
レイシャは横から度々割り込み、それを促すのだが、それでもやっと少し摂取するのみ。
とことん不思議で異様な光景を目の当たりにし、不安に駆られてならなかった。
日が傾き始め、窓から淡いオレンジの日差しが入る。
新たな防腐薬品と保湿剤の開発に手を進める最中、銀行へ赴いた夜の事を思い出す。
一時冷静さを欠いていた彼が落ち着いた後、ボートで、あれが弟であるとだけ打ち明けた。
印象からして随分差がある2人だった。
そんな兄弟もいるだろうが、何より驚いたのは態度と口調、そして最後の発言だ。
彼はヘンリーを、知り合いだと言った。
それではまるで、兄などいないものとしているようではないか。
黙々と骨格を製造するヘンリー。
その顔や目は、弟と対面した夜とは違い、仕事の顔だった。
作業に打ち込み続けるのは、余計な事を考えないようにする為か。
レイシャは、研究室でじっと考え続けていた。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




