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[3]          830.


#05. Error 誤搬送 [4]






挿絵(By みてみん)




 家の裏庭。

木陰が揺れる芝生の絨毯で、兄は、とてつも無く厚い図鑑に見入っている。




海洋生物の生態とビジュアルが、幅広く纏まった1冊。

大のお気に入りのそれは、祖父から貰った一生の宝物だ。

散らばる細かい文字の列を、円らな瞳は瞬きもせずに這って進む。






(北から流れる海流と…

大陸に向かって深みから湧き上がる湧昇流(ゆうしょうりゅう)が)




「リー」




(沿岸にプランクトンを湧き立たせ…

クジラやイルカを含む色々な海洋動物が集まる…)




「ぇ。ねぇー」




(この海は…近い…近い?

…じゃあこの辺にいるって事か…?)




「ンリ!」




(クジラが…イルカが…見られるって事…?)




「リーってば!」




(海に研究所が出来たら…

ボートに乗れるから…見れる!?)




「ヘ―――――ン――――リ―――――っ!」




突如、体が左右に激しく、大きく揺れた。

だが




「水族館に行かなくてもか!?」




体の揺れなど気にも留めず、彼は傍に立つジェレクに咄嗟に目を合わせる。

兄の突然の動きに、ジェレクの体を揺さぶる行為は声と共に止まった。




「行こうって全然連れてってくれない水族館に、行く必要はないって事か!?」



「なんで?」




図鑑は両手でドンと厚みを感じさせながら閉じられると、彼は1人興奮して立ち上がる。

1つ1つのアクションが唐突で、小さな弟は尻餅をついた。




「じいちゃんきてるよヘンリー」




「研究所ができたら、ボートで海に連れてくれるって言ってた。

今日っていつ?何日?」




「ヘ――ンリっ!じ――ちゃんいる!

あと、じーちゃんのおんなのひと!」




「……………!?」




彼はやっと、そこで弟が転んだまま声を上げている事に気づいた。

咄嗟に左手を出し、立たせてやる最中、更に遅れて目を剥く。




「じいちゃんが来てるだって!?

何で早く言わないんだよ!」




宝物を片手に、少し駆けた先で彼は急停止し、振り返る。




「じいちゃんの女の人?何だ?それ。

ばあちゃん?は…いないだろう?」




ジェレクは小刻みに駆け寄ると、見上げた。




「しごとのひとって、いってた」



「誰だ?それ」



「しらなーい」




2人は急いで家の中へ戻った。









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




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