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[6]          1150.



#12. Complete 細胞の記憶 [22]






 ヘンリーは数歩、引き下がった。

もう、聞く必要は無い。

そう言い聞かせながら、ビルに背を向け、歩き出す。




しかしまた、彼は肩を掴んで引き留めた。

それが更に、動悸を激しくさせる。

どこか強いその感覚は、あの時を呼び起こした。




「なあ、ヘンリー。顔上げろよ」



(…は……?)



どういう意味なのか。

呆れた弾みで尋ねてしまった。



「何で…笑った……」




本当に酷過ぎる出来事であり、ずっと消化しきれない。

そんな人間の前で笑うなと、睨んでやる。






 ヘンリーの妙な様子に、ビルは眉を顰めた。

しかし、そうするだけでまだ何も言わない。

ヘンリーはそれに苛立ち、半ば駆け足で船着場まで向かった。






 ボートがやっと近づいてくる。

頭の中は、あの事件で占領されている。

早く拭ってしまいたいと、兎に角急いだ。

ヘンリーは走ろうとするが、彼はまた呼び止めてくる。




「なあどうした?親父さんと話してないのか?」




触られた手を、遂に大きく払い除けた。




「触んなっ!」




 ビルは彼の豹変に驚くばかり。

そこまで力を加えたつもりはなく、余計にだ。

ヘンリーの変わりようが、頭で、事故の時の様子と合わさっていく。




「触るなっ…痛ぇんだよずっとっ…

どこもかしこもっ!」




勝手に喋っている。

黙っていたかった事が、溢れ出る。

その間、反射的に左腕の装着口を強く握っていた。

そこから酷く、激痛が派生していくのだ。




「なあ!?お前だろ!?言えよ!

俺を抑えつけてただろ!?なあっ!」



「落ち着け!」




気づけばビルに掴みかかっていた。

止まらない。

体は引き下がらない。

それを押しやるビルの力もまた、強かった。

彼の腕と手首を掴んでくる手の力で、確信に変わる。




「お前がっ……お前が…俺を……抑えてたっ……」




「ああ当たり前だろ!?何も聞いてないのか!?」




ビルはそう言い放ちながら、大きくヘンリーを後方へ押す。






 ヘンリーは怒りと焦燥に息を荒げながら、ビルを睨む。

すぐ先にボートがある。

このまま引き下がろうとするのだが




「必要な対処だった。覚えてないのか?

危うく彼女を殺しそうになってたんだぞ!?

上手くいってないからって、やり過ぎだった!

2人ともな!」




ヘンリーの両目は見開かれる。




「あいつを殺しかけたから、手を失くして当然か!?

どうなんだ!?

お前!何か知ってるんじゃないのか!?

言えよ!あれは事件だろうが!事件だろうがよ!」




再びビルの首に掴みかかり、吠え飛ばしながら揺さぶる。

感情的になり過ぎるヘンリーは、とうとう1発殴られ、崩れ落ちた。






 ビルは白い息を闇に立てながら、地面に倒れる彼を見下ろす。




「気の毒だって思ったさ!

けど…俺や同じ立場の人間は…

どうしようもねぇんだよ…」




刹那、周囲は無音と化す。

ヘンリーは揺れる視界の中、彼のぼやけた言葉を幾度となく頭で繰り返し聞きながら、フラフラと立ち上がった。




(…な…ん…だ………それ……)









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




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