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[5]          1060.



#12. Complete 細胞の記憶 [15]






 完全移行とは言え、研究所の完全クローズに関する手続きや、片付けるべき事はまだ残っている。

ヘンリーは、目立ちにくい夕方から夜の時間帯に、数日、元居た場所と往復をしていた。




シャルは、レイシャの開発した保持薬品によって、皮膚に上手く保湿効果が出ていた。

目立っていた(たる)みも改善でき、早くも違和感の解消ができつつある。








 必死に作業と向き合い続けるレイシャに留守番を頼み、ヘンリーは独り、再び海を渡って戻ってきていたある日。




 黒のキャップを目深に被り、レザージャケットを羽織っていた。

下も、何もかも相変わらず黒で占めた格好で、船着場へ向かっている。




 研究所の一時閉鎖の延長をし、完全クローズは取り下げた。

機会を窺い、再開しようと企んでいるからだ。






 手続きの後、シャルの自宅へ長期の不在を装わせに向かった。

すっかり遅くなった帰りの道中で、研究所の再開をぼんやり想像する。

結局、人材が要るようになるのか。

どう考えても非現実的な事である為、ゼロの量産計画を巡らせながら、足早に歩いていた。

その時、肩を掴まれ前後に数回揺れる。




 「なあ?そうだろ?ヘンリーだろ?」




振り返るとそこに、ビルが立っていた。

何度呼んでも振り向かず、人違いかと思い通り過ぎかけたと言う。




 ヘンリーは目を見開き、咄嗟に掴まれた手を解くと顔を背けた。

ボートまでは、もうすぐそこだった。

まだ行き来しているのかと尋ねられ、胸がザワつく。

彼を最後に見たのは、事件の日だ。

唾を飲み、喉が鳴る。

思い出したくない。




「手、どうなったんだ?あれから」



「もう…いい…」




声が震えてしまう。

どうなったか、だと。

何か知っているのではないのか。

彼は現場にいた筈だ。

そう記憶しているが、思い出したくない。






 それでも、気になってしまう。

最悪な事を犯しておきながら、今更中身など知る必要もないだろう。

それでも、気になってしまった。






「まぁ…大変だったな…」




ビルは、少しトーンを落としながら軽く笑いかけてきた。

ヘンリーは、未だに笑う事ができないでいる。

なのに目の前の彼は笑っている。

シャルも、父も、笑っていた。

一体、どうしてなのか。




「…なあ……」




顔を少し上げ、鍔の下から片目だけを向ける。

ビルは、次の言葉を黙って待っている。




「…………俺は……撃たれた……だろ…?」




小さく問われた時、ビルの目が少し揺れた。

何か、聞けるだろうか。

ヘンリーは求めるように、もう少し顔を上げる。

だが




「暴発だ……

銃規制は、まだまだ世の中の課題だな……」




動悸がし始める。

それは、体内でみるみる響いていった。




(そんな事が……聞きたいんじゃ…ない……)









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




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