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[10]         1020.



#11. Almost done 実行 [7]






 その数分後。

レイシャの背中に乗るヘンリーの手が、急に落ちた。

何かと慌てて顔を上げると、彼の顔が酷く青褪め、何かに激しく怯え始める。




「ヘンリー…?」




全身が小刻みに震え、冷や汗を流す顔に、彼女は咄嗟に触れてこちらを向けさせようとした。

しかし、彼は激しくその手を跳ね返し、逃げるように立ち上がるとシンクに飛びつき、吐いた。






 自分の身に起きていた異常事態を、急に冷静に捉えられた。

その差はまるで、天と地。

何かに乱暴に振り回され、体内全てを掻き回された気分だ。




(…誰……だ……)




一体、先程の自分は何だったのか。

怖くて叫びそうになるのを堪えながら、蛇口を捻る。

冷水が、肌に沁みていく。

このまま、海に飛び込みたくなった。

そんなにも冷たい世界があるのならば、実に心地いいだろう。




「ねぇ…」



彼女の手が近づいてくるのを察し、大きく真横に移動する。



「触る…な……」



「でも



「触るなっ!」



(…こんな…俺に……触るなよ……)




シンクの縁を掴む手が強まる。

彼女はただ、背を擦ってやりたかっただけだ。

しかし、1つ1つの接触をとことん拒む。

それが益々寂寥を呼んだ。






 人殺し。

そんなものに、触れさせたくはなかった。




「…頼む……触るな…」




俯いた視線の先で捉えた、彼女の手が引いていく影。

それに、少し安心した。

彼女は、少し間を置いてから言う。




「やっておく…だから休んで………

平気…このままやれる…」




碌に眠りもせず、思い立った事に片っ端から着手してきた。

過度に動かし続けてきた体が、余計に異変を呼び起こした。

レイシャは部屋の場所だけ聞くと、作業に戻る。

ヘンリーは蛻の殻状態で、その場からフラフラと立ち去った。








 衣食住が完璧に整った設備。

作業を終え、移動してきたそこは至れり尽くせりな環境で、レイシャはまたも圧倒されていた。

しかし、食欲も無ければ、不安で眠るどころではない。




集合住宅のような造りの1基。

その最上階にある1室を与えられた。

その隣が彼の部屋なのだが、奇妙な静けさに落ち着かない。

眠っているならば当然だろうが、レアールの事があって気が気でない。

何度かドアをノックし、声を掛けたが反応が無かった。

施錠されており、確認のしようがなく、不安に駆られながら一晩過ごした。






 最悪な夜だったが、翌日はそれを思わせない程の陽光が、カーテンの隙間から射し込んでいた。

知らぬ間に寝ており、慌てて飛び起き部屋を出る。




 彼の無事を願いながら、隣のドアを激しく叩き、ノブを揺らす。

数秒して、彼は素直に顔を出した。









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




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