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第6話
「おっす!」
学校の校門をくぐると、自転車に乗った同級生の1人が、声をかけてきた。
名前は、立波颯人君。
クラス1のイケメンで、スポーツも勉強もできる優等生。
ちなみに、「イケメン」という定義を私は知らない。
知らないのにどうしてそう言っているのかというと、周りがそう言っているからだ。
とくに、私の「友達」が。
「おはようございます」
「…お、おう」
「何か?」
「今日は“そっち”の方なんだな。誰かと思ったぜ」
“そっちの方”というのは、少々複雑な話で、詰まるところ、そういう「設定」だという話だ。
なんのことかと言うと、彼は知っているんだ。
私と、私の友達が抱えている2人だけの「秘密」を。