表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
箱と楽園  作者: 未由季
16/56

【少年・1】

 両親は、自分のことが好きではないのかもしれない。

 少年の胸には、いつも不安が渦を巻いていた。


 家族で夕食を囲んでいるとき、少年は子どもらしい無邪気さを装って、学校での出来事を話す。友達とこんな遊びをした。先生からこんなふうに褒められた。

 相槌を打つ父親の目は、一見すると穏やかだ。口元には完璧な笑みを浮かべている。


 だが少年は気づいている。

 さっきから、父親は自分の話にまったく関心を寄せていない。


 お前みたいなガキ、生まれて来なければ良かったのに。

 父親の目の奥には、そんな思いが宿っている。



 少年は両親から認められようと、すすんで家の手伝いをするようになった。

「ありがとう。助かるわ」と母親は形だけ微笑むが、決して息子の頭を撫でたりはしない。少年には、母親から触れられた記憶がない。

 母親の声には、息子への嫌悪がにじんでいる。


 こいつさえいなければ。

 母親の内に潜む憎しみは、間違いなく自分へ向けられたものだと、少年は理解する。


 両親は世間体というものを気にするたちだったので、少年が肉体的に虐げらることはなかった。

 冷え冷えとした自然、無感情の声、向けられる背中。そういったもので、両親は少年の精神を蝕んでいった。


 両親からの愛情は期待できない。

 そう悟った少年だったが、希望は捨てなかった。


 少年には、心のよりどころとなる存在があったからだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ