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短編集【不思議】

きみのそばにいるよ ×

作者: ポン酢
掲載日:2023/01/16

山の中の空気は澄んでいて、あの頃より星が近くに見える。


見上げた空。

ボクはあのどこかから降りてきたのだろうか?


冷気に張り詰めた空気はキンっと糸を張っていて、近いうちにまた雪が降るだろうと思った。


ねぇ、ゆき?

きみは今、この空を見ている?


多分、見てはいないだろう。

人の暮らしというのは忙しいものだ。

空に月がかかっている事も、星が降っている事もずっと昔に忘れてしまった。


幼い頃はそれを覚えていても、次第に忘れていってしまう。


だんだんと……。


声が聞こえなくなり、

姿すら気づくことがなくなり、

そしてそのそばに寄り添うことも叶わなくなる。


「……冬の大三角…。」


見上げた星空に輝く3つの星。

凍りつくように澄んだ冬の空に浮かぶそれを、そう呼ぶのだときみが教えてくれた。


「プロキオン…シリウス……それでペテルギウス…リゲル…三つ星…オリオン座……。おうし座のアルデバラン……。」


きみは一生懸命、指をさして教えてくれた。

でも、指をさされても空のどこを指しているかなんてわからない。

わからないボクにきみは怒って口を尖らせたね。

図鑑を見ながら教えてもらい、やっと名前ときみが指差している場所が一致したんだ。


一時、そういった事に凝っていたのか、星空を見上げてやたら色々な話を聞かせてくれた。

でも一年も経つと別の事にきみは夢中だった。

せっかく覚えた星の名前も、星座も、その神話も、何の意味もなくなってしまったと思っていた。


「……でも、無駄じゃなかったよ、ゆき…。」


夜空を見上げ、ボクは星の名前を思い出す。

きみが教えてくれた一つ一つ、もう一度、心の中で繰り返す。

その度にきみはボクのそばでお話をしてくれる。


ゆき、きみは今、幸せ?

ボクがいなくても泣いたりしていないよね?


小さかったきみは、大人になり、恋をして、お母さんになった。

小さかったきみから、きみみたいに小さな子が出てきたのにはびっくりした。


きみの時間は忙しく、どんどん過ぎていく。


ボクの時間はとてもゆっくりで、同じ場所にいても違う場所になってしまった。

そこにいるのに、手を伸ばしてももう届かない。


それでも、ボクはきみを想っているよ。

きみのくれたものがボクの中で輝いているから、ボクはまだここに要られるんだ。


あの日、淡い雪とともに消えてしまうはずだったボク。


冷たい雪とともに消えるより、きみのくれた輝きとともに消えていきたい。

それがいつになるのかボクにはわからないけれど。


いつもきみを想っているよ。

そばにいられなくても、ボクのこころは、いつでもきみに寄り添っているよ。

この体できみを包んであげる事はできなくても、遠く離れていても、ずっと。


ボクは空を見上げた。

冬の星座が輝く空をひとり、思い出とともに見上げていた。




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関連作品 

『きみのマフラーになりたい』

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