moll ラジオで騙られていた真実
一ト野糸広というクソ外道に出会ったのは私、玉川弓狩が浴びる程酒を飲んでいた日の話だ。
呑んでいたらしれっと隣に座っていて、話始め、テキトーに相槌を打っていたら酒を奢ると言い出した。
どうでもいい気分になっていた私は浴びる様に呑み続けていた。
『目が覚めたら知らない男とホテルに居た』
これなら未だ良かった。
『目が覚めたら裸で鉄の檻に入れられていた。』
よりはマシだ。
わかるか?あのイットヤとか言う男、あろう事か酔いつぶれたアタシを自宅の隠し部屋に監禁しやがった。
部屋は真っ暗。檻は蹴っても殴ってもビクともしない。あるのはラジオただ一つ。
したら、ラジオからいきなりヤツの声が聞こえてきた。
『ドゥアーモールの深夜ラジオ』。ヤツの番組だ。
そこであのクソ野郎、『この前捨て猫を拾ったんですよ。可愛くて可愛くて仕方がなくて飼うことにしました。ユカリちゃんって子猫です。』と抜かしやがった。
それから多分数日。完全防音で鍵のかかった檻が増えて、もう一人、ヤツの子猫が増えた。
名前ははるか。暗闇で分かり辛いが、黒髪が自慢だと言っていた。
あぁ、その通り、トリミングと称してヤツははるかを縛って根元から髪をバッサリやりやがった。
暴れて抵抗して、それでもダメで、ヤツが切った髪を嗅いでいる足元で泣いてたよ。
更に数日後。三人目の子猫が増えた。
名前はゆう。連れられて来た時は泣いていて、一日中喚いて泣いて五月蠅かった。
ヤツがまたたびをやってから変わった。一日中笑って過ごしてやがる。
またたびが切れると、最初の頃以上に酷い癇癪を起すようになったけどな。
そういう事だ。
あのクソ野郎がラジオで話している内容はウソじゃねぇ。
でも真実なんてひとっつも無い。あのクズサイコ野郎、人様を子猫だと言って愛玩動物にしてやがる。
あいつがはるかの髪を切った時も、ゆうがまたたびで狂った時も、笑ってやがった。
「という事で今日のドゥアーモールの深夜ラジオはここまで。
お相手は己共己上子こと『トモ』と、」
「子猫を愛して止まない一ト野糸広こと『いっと』でお送りしました!それでは!」
スピーカーから明るい声が響く。
あー、腹減ったな。
昨夜思いついたお話をそのまんま今日書きました。ホラーはホラーでも幽霊系じゃないですね。
でも矢張り、陰陽師や祓魔師やらで如何にもならない人間が一番怖い。
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