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深夜の女子会



「ミチル、遅い遅い! もう始めてるわよー!」


あやめがそう言うと、ミチルが人差し指を立てて静かにジェスチャーをする。


「あやめ姉さん、声が大きい!」


「お酒美味しいよー。ミチル姉さんも飲みなよー」


りくは酒を飲みつつおつまみを食べている。


「飲みなよー……」


メーテルは比較的アルコール度数の低めのカクテルを飲みながらも、ほんのりと頬が赤い。


もしかしたら、酒に弱い体質なのかもしれない。


「りくもメーテルも……。って、メーテルは半分寝てるわね。とにかく、遅れちゃってごめんなさい。あの童貞、なかなか寝てくれなくて、困ってたの。今は眠りの魔法でぐっすりよ」


ミチルがそう言うとあやめが珍しいと言った様子でこう聞く。


「眠りの魔法って、あなたあれ回復魔法よ? 苦手じゃなかったの?」


「気合と根性でなんとかなった」


ミチルはそう言ってソファーに座る。


「さすが、最高指揮官様」


あやめはそう言って拍手をした。


「昔の、呼び方で呼ばないでよ……。あやめ姉さん」


ミチルは自らの拳を僅かに握った。


「ごめんなさいねぇ。つい、昔の癖で」


あやめは少しだけ眉をハノ字にした。


「ねーねー、それよりもさー、あのソートーカッカ、使えるの?」


いひひっと歪に笑みを浮かべるりく。


昼間の可愛らしさはどこにいったのだろう。

脚と腕を組んで、余裕たっぷりに話すところは、大物そのもの。


「ソートーカッカ、使えなかったら、私に頂戴? 心の崩壊について調べたいから、人間の生きた資料が欲しかったんだよね。ひひっ!」


りくがそう言うと、メーテルが首を横に振る。


「メーテル、あの人悪い人に思えない。総統に相応しくない。だから、……信じられる」


四姉妹は例の店に集まり、女子会と言うにはあまりにも怪しげな話し合いをするのだった。


今、眠っている現総統閣下、いや、偽物の総統閣下、相沢将暉についてを……。


「もう何度目? 休暇。りく数えるの飽きちゃったから前のソートーカッカのことは忘れちゃった。確か今回で236人目だった?」


りくはつまらなさそうに目を細めてそう言う。


「ううん。それは前の前の人よー。前の人は237人目で、今の人は238人目よ」


あやめがまったりと言って、テキーラをお茶でも飲むかのようにゆっくりと味わって飲んでいた。


「姉さん!」


ペースが速すぎるでしょ。

そうミチルは言いたかった。


「あらあら、もうなくなっちゃった」


テキーラが、一本空いた。


「姉さん、頼むから、酔って封印を解いてしまって大暴れ、なんてしないでよ。また世界中が炎に包まれて、今の総統閣下が死んだら私達は世界を渡って新しい根城を作って本当の総統閣下を呼んで悪を作らせて、休暇の間になんとか『あれ』をやれそうな人間を探さなくちゃいけないんだから」


ミチルは疲れたような顔を見せてそう言った。


ミチルは「あー、嫌だ嫌だ」と言いながら魔法で和菓子を大量にテーブルに出した。


「あなたの仕事嫌いは嫌よ嫌よも好きの内の典型的な例よねぇ。それにしても、今日は和菓子なのねぇ。日本酒を買っておけばよかったわ」


あやめは全くと言って良いほど酔うかもしれないという可能性を考えないようだ。


「メーテル、これ好き。桜餅」


「私はー、おはぎ食べる! いひひ、和菓子の研究ってのはしないけど、日本人の感性ってものを研究してみたいなとは思うよ。ただ、研究しても得にはならないからやらないけど」


そう言いながらりくはおはぎを食べた。


「さすが元研究員」


あやめがそう言うとりくは笑う。


「あやめ姉さん、元じゃないよ。私は今でも研究員。フリーのねっ!」


「メーテルだけ、肩書何もない……」


メーテルは悲しそうに俯いた。


「あるじゃない!」


メーテル以外の三人の声が重なった。


「預言者やってたじゃない。長年、人間のフリをして」


ミチルが呆れてそう言うと、あやめがにこやかに笑った。


「そうよー。姿を変えて年齢を変えて、世界を渡っても人間側になって、悪魔側では無力に見せるために病弱で何も出来ないから、家からも出ないなんて『設定』をあの総統閣下さえも欺いて皆の頭に『植え付けた』じゃないの」


「元々は悪のストーリーテラーなんて呼ばれてて、総統閣下にも重宝されてたの、忘れたのー?」


りくがそう言いながらメーテルの頭を撫でた。


メーテルは目をきゅっと伏せる。


「可愛いー!」


りくがそう言ってメーテルを抱きしめる。


「りく姉さん、苦しい」


メーテルはそう言ってりくを邪魔そうな眼で見ている。


「ごめんごめーん。でもこのくらい、大丈夫でしょっ!」


言うことを聞かないりくはメーテルに抱き着いたまま離れない。

メーテルは迷惑そうだ。


「ミチル姉さん、あやめ姉さん、助けて……。おっぱいが、私を襲ってくるの……」


ミチルはりくの肩に手を置いて優しくこう言う。


「りく、離れて。メーテルが窒息してしまう」


「はーい、ミチル姉さん」


りくがそう言ってメーテルを解放する。


「ぷはっ」


メーテルはりくの胸から離れることが出来て、安心した。


「ま、それじゃあ皆、話しましょう。これからのことを」


ミチルがそういうと、他の姉妹達が皆頷く。


「まずあの童貞、演説とか話すことだけは出来るから、その点に集中させて公務をさせておけばいいと思うの。ただ、年齢が一緒か少し上くらいの女性に興奮するみたいだから、気をつけないとね」


ミチルは少し呆れていた。


「それって節操なしってこと?」


りくが不思議そうに聞くと、あやめがにこりとして口を開く。


「つい、反応してしまうものよ。りく。男ってそういう生き物なの。仕方がないのよー」


「さすが、あやめ姉さん。何回も好き好んで人間に転生して遊んでただけあるわね」


ミチルは頷きながらそう言っていた。


「伊達にあなた達よりもずっと前から生きていたわけじゃないもの。男の子として生きてきたからこそ、わかるのよ。あと、伴侶を見つけることもなくどの人生も終わらせてしまったのが、心残りかしら……。って、そうじゃないでしょう? 今は、現総統閣下について話し合わないと」


あやめがそう言って口元に手を添えて「うふふ」と微笑んだ。


ミチルがそんなあやめを見てから、メーテルを見る。


「メーテル、予知はまだ?」


「多分、もう少し……っ! 来たっ!」


メーテルは身体をソファーに完全に預けた。


「あら、今回は」


あやめが嬉しそうに目を細める。


「随分とお早くて助かるなぁ! にひひっ!」


りくが笑いながらメーテルをじっと見つめる。


「二人共、静かに」


真剣な表情でミチルが耳を傾ける。


メーテルは目を閉じて、そのぷっくりとしていて赤い唇を開いた。

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