これが総統のお仕事
目の前に広がっている世界。
それは瓦礫の山。屍もそれなりに。
生きている者達は、数少ない……。
「この辺りは、実は工事が間に合わなかったところです」
「工事? 何の?」
工事が間に合わなかったくらいで、こんなことになるのだろうか。
「悪魔の間引きという、まあ、工事と呼ばれていますが、つまりは強いものだけを生き残らせるというものです」
「はあ……!?」
「悪魔も食糧難の時代がーとか、いろいろあるので、こうしてたまに世界のどこかで間引きを行っているのですよ」
「で、でも、何も死なせなくても……」
そうだ。滅ぼしていい命なんて、どこにもって、悪魔って命あるのか?
なんだかその辺りがうやむやなんだよなぁ。
「総統閣下のご命令ですから」
ミチルは酷く冷たい笑みを見せた。
そっか……。ミチルは、元々前の……いや、本来の総統閣下の直属の部下だもんな……。
でも、自分達は怖くはないのだろうか?
いつか間引かれてしまうかもしれないのに。
「でも、工事が間に合わなかったんなら、こんなに酷くはならないんじゃ……」
「工事が間に合わないと、同族争いを行うんです。悪というのは、自分を絶対的なところに安置したいので、他を潰しに行くんです。そして、その力を自分のものにするのです。人間でもそういうことがありますよね? 受験なんて、それが顕著に表れますよねぇ?」
「そりゃ、そうだけど……。何も、命の奪い合いなんて。俺っち、そんなことはしたことないし」
「まあ、その辺りは置いておいて。そろそろお仕事をお願い致します」
「へ?」
「生き残り達を勧誘するのです」
「ええー」
マジで?
こんな状況でそれ言う?
「簡単です。『ついてこい』と、それだけを言えばいいのですよ。簡単でしょ?」
そんな気軽に言ってくれるけど、俺っちにそんなカリスマ性ないんだけどなぁー。
って、うわ、屍動いた!
「屍も、死しても尚動き続けるモノが多いです。この地域は、死しても屍が勝手に再生する悪魔達でいっぱいですから、死んだ悪魔は恐らくいないのでは? ほら、安心したでしょ。さあ、早く勧誘してください」
そう言って、ミチルは俺っちにマイクを渡した。
後ろを見てみると、大きなスピーカーが置かれている。
いつの間に用意したんだ。こんなもの。
「簡単です。『ついてこい』の一言、それだけです」
ミチルはにこにこ笑っている。
わかったよ。やってやるよ……!
「ついてこい!!」
キーンとマイクがハウリングする。
そしてスピーカーから俺っちの声の波動のようなものが見えた。
それが、この辺りの地域全域に行き渡る。
うわぁ。こんなこと言ったら何だけど、俺っち恥ずかしくてしばらく外出られないわ。
俺っちのヘボボイスが広まってしまった。
でも、結果は不思議なもので、俺っちのところに駆け寄って来る悪魔達がいっぱいいた。
「総統閣下! ついていきます。どこまでも!」
そんなことを皆言ってくるのだ。
ミチルはそんな悪魔達を集めて、契約をしていく。
「勤め先は各々に後日通達しまーす」
勤め先って、いくつもあるのか?
……あるんだろうなぁ。
最初の時の集会だって、相当な人数だったもんな。
仕事って何だろう。ちょっと気になる。
「総統閣下、俺も、総統閣下みたいになれるかな!」
かなり強かったのか、間引きに負けず、全く傷もない少年がそう言った。
ミチルが少し心配そうにこちらを見ている。
俺っちはどうしたらいいのか悩んだけれど、その少年の肩をぽんと叩く。
「同じことをすればいい……。悪の道は、まず先人と同じことをすることだ」
ぶっちゃけ同じ過ちを繰り返すぜって話なんだけどさ。
あと悪の道とかよくわからない。
総統閣下って、こんな風にしてればいいわけ?
ってか、口調これで合ってる?
俺っちそれっぽいゲームのキャラ真似してるだけだよ?
「総統閣下……!」
少年は感極まったとばかりに目を輝かせて大きく何度も頷いた。
悪の者を作ってしまったわー……。
また、他の悪魔達も嬉しそうにしている。
「総統閣下! 総統閣下!」
なんか、総統閣下コールまで出始めている。
ミチルも頷いていた。
ってことは、俺っち成功した?
こんな感じで良い?
だったら、俺っち、意外と出来そうかも……。
総統閣下って、仕事!
そう思いながら、俺っちは「悪の道とは」ということを力説(演説)して、ミチルから「総統閣下、そろそろ時間です」と言われてから話を終えて、皆に見送られながら車に乗った。
そして車に乗って発進すると、ミチルが俺っちにこう言ってきた。
「見事です。総統閣下。やれると信じておりました。あの少年も、立派な悪魔に育つことでしょう。あの場にいた者達も、皆総統閣下の演説にうっとりしていました」
「そう。じゃあ、俺っちはもう帰って眠れるんだよね」
あー、疲れた。
「まさか。疲れたら少々きついでしょうが、車の中で寝てください。そしてこの世界のありとあらゆるところに行きますよ」
「えっ!?」
マジ?
「総統閣下ですから、そのくらいしていただかなければ。前総統閣下は嫌がりましたが、現総統閣下は大丈夫でしょう?」
有無を言わせないこの感じ……。
「うん……。俺っち、頑張る……」
「さすが総統閣下!」
断るわけには、いかないよなぁ。




