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続 悪の総統の話


車に揺られながら、俺っちはすこし息を吐く。


「あと、総統閣下は昔、もっとちゃんと仕事をしていた時は軍隊をお作りになっていました」


ミチルはそう言いながら俺っちを見る。


うん。だろうね。ってかさ。


「軍服あるからある程度わかるって!」


「そうですよね。ちなみに私、軍隊をまとめる指揮官やってました」


「へえ、指揮官。え、でも年齢的に……」


「悪魔の見た目と年齢は必ずしも比例するといったことはありませんので、少女の姿をしていても一人前の大人の悪魔として見られます。ましてや私も昔はいろいろと悪さをしていましたから」


「え、悪さ?」


「腕試しに前の総統閣下の軍隊を潰して回るという……」


「何やってんのぉ!? それ総統の粛清対象じゃない!? 大丈夫だったの!? 何があって総統閣下の直属の部下に!?」


もうツッコミどころ満載って言うね!


「ああ、軍隊潰して回ってたら『私の軍隊を潰したのは目を瞑ってあげるから、直属の部下になって軍隊作ってそれの指揮をしてよ☆』と勧誘されました」


「随分軽いノリだなぁ、おい!」


「根暗とは真逆の性格ですから、あの総統閣下は。それに私が仕方なく部下になると軍隊を潰されたことよりも『複数の軍隊を潰せるだけのやつがいるっ知ってわくわくした』とまで言ってました」


「ポジティブというか、戦闘馬鹿っしょ!? 本当に大丈夫!? 俺っちなんかが総統やってて!」


「頭脳派に転向したと思わせれば、きっと大丈夫かと。そもそもあの総統は頭も悪くありませんからね。何度も世界を手中にし、また滅ぼすのもあの方が珍しく頭を使って考えた結果です」


「嫌な頭の使い方ー! 俺っちには理解出来ない!」


本当に、理解出来ないよっ!


だって俺っち一般人だし、元々総統なんてやれるようなもんじゃないしさぁ!


「……総統閣下は、本当の総統閣下に勝てると思いますか?」


「え、無理無理! そんなの聞かされたら無理だよ!」


「それが、人間として普通のことですよね。でも、私としてはそれでは物足りない」


「どういうこと?」


「本当の総統閣下に勝つつもりでお仕事をしていてくだされば、いつかは本当の総統閣下を倒して、あなたが本当の総統閣下の椅子に座れる、ということですよ」


……なんかミチル、俺のこと買い被りすぎじゃない?


「俺っちに何期待してんのかわからないけど、俺っちにはそんな大それたこと出来ないよ。ってかさ、ミチルだって本当は本当の総統閣下の方が、いいっしょ? 俺っちみたいなニートで力説しか出来ないやつより、絶対的な悪の方が魅力的なんでしょ? 悪魔なんだからさ」


ミチルの瞳が、揺れた気がした。


……どうしたんだろう?


「ミチル? どうした?」


「私は、今の総統閣下の方が……。悪魔達の無駄死にもありませんし」


「無駄死に?」


「気まぐれで悪魔達を人間界に放って遊ばせるんです。しかしその過程で、多くの悪魔達が無駄死にするんです。まさに悪魔の所業とでも言いましょうか。総統閣下によって選ばれるんです。生きて良い悪魔、そうでない悪魔。基本的に人間界に放たれる悪魔達は、後者です」


「……それは、惨いね。でも悪魔だったらそういうところも惹かれるんじゃないの? ミチルは違うってこと?」


「長年悪魔をやって、転生なんかをしていますと、情も移ります。正直なところ、今では悪魔的な考え方の方が、少ないとでも申しましょうか……」


「ふーん」


人間側の悪魔って子とか。

でもそれってさ。


「別にいいんじゃない? 人間側の悪魔がいても。同族を殺したくないって思ったって、不思議じゃないっしょ!」


「悪魔、失格かもしれませんね。あ、そうだ。このことは誰にも言わないでくださいね。姉さん達にも……」


「わかってるって! 俺っちを信じて!」


「……信じます。でも、もし約束を破ったら、私も悪魔としてあなたを魔界の底の底まで堕として差し上げます」


「大丈夫! 俺っち口硬いから!」


そもそも魔界で話せる人がいないからねっ!


ミチルには超安心してほしい!


「さて、長くなりましたが、まとめると本当の総統閣下はテキトーな性格で気分屋、力でねじ伏せるのが大好き、遊ぶの大好き、などなどですね。世界を滅ぼす時なんかは、悪魔達からの大歓声がこちら側のあちこちから聞こえるんですよ。狂ってますよね。これが悪ってものです。悪の総統閣下は、そういうことをするものです」


ミチルは複雑な表情だった。


ミチルは、どうやら悪魔ってほど、悪魔じゃない。


そんな気がする。


「総統閣下、もう屋敷に着きますよ。屋敷に着いたらまず、書類の確認はしなくていいので、書類に判子を押すという大変面倒な仕事をしてください」


「それって魔法で出来るっしょ? なんで俺っちがやらなきゃいけないの?」


「総統閣下でなければ判子を押せない魔法の掛かった書類なんです」


「俺っち偽物だよ?」


「その軍服を着ている間はずっと総統閣下ですから、偽物ではありません」


「そういうもん?」


「はい。申し訳ございません。人間界以上に、まだアナログなところがありまして……。魔法を使ってまで契約書を作る、ということがあるんです」


「めんどくせー」


思ったよりも、ここって科学技術進んでないのなー。


あと、総統閣下って、結局何なんだろう。

絶対悪なのは、間違いなさそうだけど……。

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