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本当の悪の総統の話

「長きに渡るご公務、お疲れ様でした」


車の中でミチルがそう言って拍手をしてくれた。


ある街で演説をした後、俺っちとミチルは、車にいつものとおり揺られていた。


やっぱりその拍手、癖なんだね!




「あ、まあ、それっぽいことなら出来るから……」


「その控えめなところから向上心が見られます! さすが総統閣下!」


……それは少し違うっしょ!


でも、ミチルって面白いなぁ。


昨日はミチルの過去を聞ける絶好のチャンスだったけれど、でも、まだそのタイミングではないと思った。


不思議なことだけど、俺っちはミチルに初めて会った時から、懐かしさのようなものを感じていた。


それは街のどこかで似た人を見かけたりしただけのことかもしれない……。


ただ、そんな軽い関係ではなかったような、そんな気がした。


俺っち、どういう意味かさっぱりわからないけどね!


「そういえば総統閣下は前総統閣下……、休暇に行ってしまった総統閣下のことを、知りたいですか?」


ミチルはどこか真面目に聞いてきた。


「え、あ、聞けるなら、聞きたいかも! 俺っち総統の真似っこしなくちゃいけないから!」


「では、屋敷に着くまでの間、前総統閣下のお話を致しましょう。結構長い道のりですからね。丁度良かったです」


ミチルはそう言うと話す姿勢に入る。


な、なんか少し、怖いくらい真剣な眼だなぁ……。


「前の総統閣下は……ああ、もう面倒なんで話が終わるまで総統閣下と呼びますね。あの総統閣下は何度も多くの世界を手中にしてきたカリスマ性溢れる魅力満点の人です。力も間違いなく多く、逆らう者には絶対的な力でねじ伏せてきました。また、性格がとても遊び人といったような自由な方なので、こうして何度も休暇に行ってしまわれます。普段、お仕事全然してくれないんですけどねー……。休暇だけは取るんですよ。全く」


それはそれは、大変そう!


「でもその休暇、何をしているかわかりますか?」


「休暇ってくらいだから、バカンスに行ってるんじゃ……? 俺っちが呼ばれて別の世界に行く時、超海に行く人! って感じの格好してたから」


「まあ、バカンスもありますけどね。その最大の目的は気まぐれで世界を滅ぼすことなんですよ」


「世界を、滅ぼすぅうううう!?」


何!? 休暇ってそんなおっそろしいものだったの!?


「何せ総統閣下は気まぐれ、不意に思いついて、ということで行動を起こす方ですので、休暇でハワイにでも行ってるかと思いきや、実は世界を滅ぼしてましたーっていうことが多いんです。多分、今回もどこかの世界を滅ぼしに行くのではないかと思うのですが」


「それって止めた方がよくない!? 」


「私たちには止められません。なにせ、悪の総統ですから。」


「うわ……」


世界が滅びるとかマジで考えられない。


てか今まであまり深く考えたことなかった。なんかいろいろ突然すぎる流れでいつも。



それに世界滅ぼすとかそんなことされたらまた帰るところなくなっちゃうじゃん!


……また?


またって、まるで何回も滅ぼされてるような感じだ。


変なの。俺っち、世界滅ぼされたことないのに。


「あ、でもさ、世界滅ぼしても意味ないんじゃね? 何か得でもあんのー?」


「悪魔達に実力を見せられますから、総統閣下をあまりよく思っていない勢力を抑えることが出来ます。こちらにも、派閥みたいなものがありますからね。とは言っても、行動に出ることはまずないのです。何故だか、わかりますか?」


「さあ……」


「それだけ、総統閣下の力が強く、また残酷な遊びが大好きだからです」


「残酷な遊び……?」


「内臓を生きたまま取り出すんです。死んだらまた蘇らせて、何度も同じ苦痛を」


「あーいや!ききたくない!」


「子どもならなおさらたのしいようで。」



えー、えー。


マジかよ。


俺っちは思わす言葉を失ってしまった。


だってそれだけの衝撃じゃん! いくら悪とは言ってもただのクズじゃねえか!

「信じられないかもしれませんが、これでもまだマシになった方で、昔はもう、酷いというか、悪としては素晴らしいんですが、私でもちょっと引いてしまうくらいでした……」


ミチルが遠い目をしている……。


余程のことがあったんだね! ってかそれでよく支持されるなぁ!


独裁者かよ!


「悪の総統閣下ということなので、皆には最高に受け入れられてます。悪魔としてならば当然、強くて悪いことを出来る方を上に立たせたいと思うのが普通ですからね。独裁者万歳! と言ったところでしょうか」


独裁者だったぁ!


「ですから、今の総統閣下のように真面目に仕事に取り組まなくても、本来の総統閣下は多くの者達に支持されているんです」


「頭おかしいね!」


おっと、つい本音が……。


「人間からしたら頭がおかしいと思われるでしょうが、それだけ悪というのは完全な力の世界なんです。残酷な世界なんです。総統閣下というのは、それだけ、残酷な悪で、悪にとっては最高に魅力的なんですよ」


うわ、悪の世界こわ。


「俺っち、そこまで残酷にはなれないよ」


「大丈夫です。総統閣下が動くのは、気まぐれですから、実質動かないのとほぼ同じです。動いたら動いたで遊びたいんだなーって勝手に皆は思いますから」


そう聞いて俺っちは少し安心した。


でもなんでだか、すごく不安をかんじた。


総統閣下について、何かを隠している。


それも、重要なことを。


考えようとした。でも何故だろ。すごくぼーとした。



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