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ついていけない童貞総統


俺っちが目を覚ますと、そこはネオン街だった。

地べたにそのまま倒れている。




「ここどこ!」


俺っちはすぐさま飛び起きる。


「おはようございます。総統閣下。今日はネオン街であれやこれやと男女がイチャイチャする中で演説をしてもらいます」とミチルの声が背後発せられる。


「いたんだ!てかリア充ばかりじゃないのそれ!? 俺っちが邪魔しちゃっていいの!?」


「大丈夫です。本当のリア充ならさっさと建物に入ってます」


「ピンク!?ピンクですか!?」


「さあ……。私はそういった関係になれるような人とは付き合ったことがありませんので」


なんてこった。


ミチルは経験がないかもしれないということに、俺っちは気づいてしまった。

「……っ」


俺っちは両手で自分の顔を隠す。


絶対俺っち今顔真っ赤だもん。


「総統閣下、その件についてはどうでもいいので流しますが、この街は特殊な街です。陽が出ていても真っ暗な夜なのです。自然と光を求めた者達が、ネオン街へと発展させたと言われていますが……」


「いますが……?」


「前総統閣下が『ここネオン街にしようー☆』などと馬鹿なことを言って、最新の技術を使って本当に太陽も輝けない真っ暗な場所を作り出して、そしてネオン街へと変化させていったのです。当時を知る者は、恐らくほぼいないことでしょう。何故なら、私が生まれてから……人間にして17年ほどにあったお話ですので、今から何千年……という時が経っています。そのため忘れている者が多いので、相当な歴史マニアくらいしか知りません」


「……そ、そうなんだ」


俺っち知っちゃったよ。


ミチル、俺っちより全然年上じゃん……。


「まあ、何度も姿を変えたり転生をしてみたりと、いろいろとしてはいましたが」


「はあ……」


転生ってことはその時点で0に戻るんじゃないの?


違うの?


「基本的に魔界では転生しても魂の年齢で数えますから、0に戻ることはないですね」


「えっ」


「不思議そうな感情の波動を感じましたので。我々はそういった心の動きに敏感なんです。」


テレパスみたいなものかな?何の力なの。それは。



「とにかくこのネオン街をもっときらきら輝いたものにするべく、何か悪について演説を。総統閣下」


「そうは言われても、俺っち悪についてそんなに詳しくないし……」


「では子供を複数人子育てする世帯にしたいことなどを……。少子化問題もありますから。特にこのネオン街では顕著になって表れています」


「なんでネオン街で?」


「それはご自分でお考え下さい」


今まで見たこともない爽やかな笑顔だ……!


「でも、俺っち本当にわからないんだけど」


「はあ。これだから人間は。そうやって大事なところを隠しているから余計に男女のその後の負担に繋がると言うのに……。総統閣下までこんな想像力も働かないようなそんな男だなんて……。子供が出来るということがどういうことかを軽視してしまう若者が増えたり、簡単に命を捨てるなどという愚かな行為、さらには考えに考え抜いた結果どうしても子供を諦めなければいけない世帯もあるということをどうして教えないのかと私はいつも……」


「それだぁ!」


「?」


そして俺っちは頭の中でパズルを組み立てるみたいにして演説の内容を考えた。


日本でも少子化が問題になっていた。それを考える。

話は無限に湧いてくる。世帯の話はもちろん、働き方の変化や今後の世界の在り方についてなど、山のように問題はある。


「ミチル、少しでいいから俺っちにこの世界で困ってる子育ての話とか教えて!」


「え、いいですけど……」


そして教えてもらった情報から、さらに詳細な内容を決めて、俺っちはミチルに案内されてなんか、昔のクラブ? みたいなところの、お立ち台みたいなところに立たされた。


マイクを渡され、ただ立っていると、立ち止まってこちらに皆がやってきた。


うわぁ、緊張するー!


って、もう慣れてきたんだけどね。


ニートの適応能力もなかなかのものでしょ。


「んっんー。皆、よく聞くといい。この世界で、生まれてくる新たな命、その命が今、脅かされている。まだ生まれていない命も含め、子供を欲しがる世帯に、安心安全にその命を与えたい。また、様々な理由から諦めざるを得なかった者達へも支援をと考えている。悪の種……、つまりは子供で、世界をいっぱいにしようではないか……!」


そしてまあ、大体予想していた通りに進んで、適当に力説しておいた。


涙を流す者や歓声が起こったり、なんだか知らないが結構ウケたようだ。


俺っち頑張ったー!


っと、その前に、ミチルが今日はホテルを用意してくれてるって言ってたなぁ。


「総統閣下、こちらのホテルです。生憎、手違いにより一部屋しか用意されていないので、私も一緒の部屋で眠らせていただきます」


「あ、いいよー!」


それにしても、このホテル。妙におしゃれだなぁ。お城っぽいって言うか、すごくいにしえからありそうな。


でも、俺っちホテルの入り口にあるネオンでぎらぎら光ってる文字を読んでちょっと後悔した。


「あの、ここ、ラブホテルというところでは……」


「そうですけど、私では不服ですか? 総統閣下」


ミチルがにやっと笑った。


「ちなみに私は初めてですけど」


ほらー、ほらね?


俺っち、もしかしたら、童貞卒業しちゃうのかなぁ……?


なんか、急展開で、俺っちはついていけないよ。

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