やるしかない
「おはようカナ」
「……おはようヨータ」
朝10時。
俺の部屋に集合した俺らは机を挟んでお互いの顔を見やる。
元々今日は家具を買うつもりの日。
そして俺にとっては30年の呪縛を解いて勝負をかける日だ。
今日はしっかり起きたし、カナも時間通りに来た。
「カナがピッタリに来るなんて珍しいな」
「……そんなこと無いと思うけど」
昨日とは違って素っ気なく言葉を返される。
そういえば昨日の最後の方もどこかボンヤリしていた。
……まぁ俺自身も雅からの唐突な告白でびっくりしていて、よく覚えてないんだけど。
でも、やっぱりカナの顔は……
「大丈夫か?」
「……うん、大丈夫だよ」
そうは言うもののどこかゲッソリした印象を覚える。
本当に1晩で何があったんだろうか。
「……行くか?」
「いや。ちょっと待って」
「分かった」
出立しようと声をかけるが、止められる。
真剣な、でもどこか思い詰めた眼差しで訴えかけてくるカナに動きが止まる。
それからどれくらい経っただろうか。
わかんないけど見つめあって。
じっとカナを見て決意を改める。
「大丈夫?」
「うん」
また時間が経っていって。
でもいつまででも見てられる。だからもっと近くに行くために……
きっとカナも何かあったのだろう。
でも、俺も丁度心の準備が欲しかった。
「あのさカナ。言いたいことがあるんだけど……」
「いや、やめて! 分かってる。大丈夫。私が先に言うからやめて!!」
「えっ!?」
!?!?
12時。
俺はとうとう先に口を開いた。
本当はレストランとかでしたかったんだけど、心の準備が整った一瞬を大事にしたかった。
しかし、俺の言葉は遮られてしまう。
そして続けられたカナの言葉に、俺は度肝を抜かれた。
気づかれてた?
確かに昨日の『好きな人がいる』発言は露骨すぎたかもしれない。
その上で思い詰めた表情のカナ、俺に言葉を言わせないカナ。
俺にだって30年生きてきた経験がある。
……これはごめんなさいだ。
振られる時の空気を俺は感じ取ってしまった。
カナは俺の気持ちを分かった上で、断ろうとしている。
それは不味い。だけど仕方なのないことで。
結局俺の一人相撲だったということの証左で。
「……あのさ、ヨータ」
やめてくれよという俺の思いは届かない。
カナが口を開いた。
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