ファミレスデート2
「ヨータ何飲むん?」
「アイスコーヒー」
「おっとなですなぁ……」
隣でティーカップを取る彼を見る。
先程から謝ってばかりの彼を見る。
その優しさが正直さが大好きで。
「私はメロンコーラかなぁ……」
「中々にエグめの錬金術しようとしてんな」
「えへへ……」
微笑みながらメロンソーダとコーラを混ぜる。
本当はブラックのコーヒーでもいいんだけど、彼はあどけない娘が好きだから。ほら、ちょっと笑った。
笑いジワを出しながらスっと目を薄める彼が好きだ。私の頬も緩んじゃう。
と言いつつジュース混ぜるの美味しいから嫌いじゃないんだけどね。
「おっけー? 戻ろっか!」
促しつつ背を2回叩く。うおっ、でっか。
逞しい幼なじみに、なんかまたビックリする。
「っと、キタキタ!!」
席に戻り雑談してるとすぐに料理が運ばれてくる。
といっても、前菜のサラダとピリ辛チキンだけ。
「うん? うん? なんだねそのもの欲しげなお顔は」
軽く1発煽る。
でもこれはだいたい何時もの儀式だから、お互い笑顔だ。
「ん? ななななんのことかなぁ……?」
「ふっふっふ、お主も素直では無いのぉ。おっ、でもお手々だけは正直なようで」
「なっ、なんだとっ!?」
5本あるチキンの内3本を小皿に取り分けつつ茶番を繰り広げる。
「はいヨータ」
「サンクス! って多くね?」
「お礼は結構。痛むのは君の財布だからね……」
今日は奢りなのでヨータに過半数を渡す。
そもそも朝ガッツリ食べたから昼頼みすぎた感が……
「あっ、サラダありがとね。って多っ!! ヨータ野菜食べなさいよ」
「うぃうぃ。カルボナーラには玉ねぎが入ってるからセーフです」
と、チキンと交換するようにヨータがサラダを取り分けてくれた。
が、私の分がだいぶ多い。
ヨータ君は野菜が嫌いじゃないけど特に好きでもない。
だからこそチンゲン菜を美味しいって言ってくれた時はとても嬉しかったんだけども。
「どぞどぞ。カナさんお腹いっぱいお食べなさい……」
「さも慈愛であるかのように振る舞うな。じゃあ遠慮なくいただきますけども」
「「いただきます!」」
2人で声を揃えて挨拶をし、同時にサラダをパクつく。
「おいっし!」
やっぱり何度食べても美味しい。
結局ヨータも笑顔じゃん。
この美味しさが私を新たなるステージに運ぶ。
「おい、こっち向くんだよヨータ!」
「うん?」
あ、ヤバい緊張してきた。
が、しかしやらねばならん。まぁ誰に強制された訳でもないんだけれども。
ぼーっとした顔を上げたヨータの半開きになった口にサラダ付きのフォークをぶち込む。
「あーんっ!」
「うおっ!?」
「ウマいでござろう? ならばもっと食え」
照れは隠していく。さも幼なじみでこんな事当然ですよ? 感を出しながら。
すると大きく目を見開いたヨータが、何を思ったか表情をガッと崩してニヘラと言葉を発した。
「うん、ウマい。ありがと、カナ」
……負けた。
負けた。
攻めたハズだったのに、反撃に負けた。
カッコイイわけじゃない、と思う。
でもなんだろう。やっぱ病なんだろう。
「……どいたしまして」
わからん。もう無理だ。
直視できるわけがなく。
「チキンも美味いな~」
「そだね」
口数も減る。もっと話していたいのに。
無理だ。
縛られる心臓が自由に動くのを許してくれない。
「あっ、カルボナーラ来たよ! お先どうぞ」
「ありあり!」
だからだろうか。
こんな浮かれてたからだろうか。
人生はプラスだけじゃない。
――――――こういう時は、横からぶん殴られることが多い。今日もまたその例に漏れず。