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第一話一節 夢幻の中で

 自分の地元、業無(わざない)公園の時計が十二時を指している。


 流石、公園のシンボルといったところか。見た感じ被害がなくて安心出来る。


 しかし、被害がないのは時計だけで、辺りは火災で木々取り返しがつかないほど燃えてしまっているようだった。いかんせん、さっきの戦いで俺は負けたようで、立ち上がりたくても立ち上がれない感じがした。


 もっと子供の時から運動していて、尚且つ、体育会系の人間だったらまだましに殴り合えたのかなぁ……って思っていても、もう遅い。

 どうやら天は二物を与えないっていう言葉が改めて本当だと感じた。


 あぁ……、ただひたすらに悔しい……。


 禍々しくメラメラと燃える火球がありとあらゆる建物を包み込み、禍々しくビリビリと劈くような雷が逃げ惑う人々に対して的確に落ちていく。


 これは明らかに¨殺意¨だ。音と雰囲気で確実なる殺意を感じる。


 推測――どうやら敵怪人は上空にいる。


 後、気になるのは、俺の目の前に少女が立っている。


 目の前に立っている少女のことを知っているか?と聞かれたら、俺は多分こう答えるだろう。


 分からないッ!


 何故ならこの少女の顔が映らなくなったアナログテレビかのように砂嵐で顔が隠れているからだ。少女の特徴を言っていけば、長い黒髪ポニーテールで、マントを羽織り、ホットパンツを履いているようで――それぐらいしか分からんっ! これがファッション絶望男の限界だ。


 まぁ、とにかくとても動きやすい服装って感じがする。


 後はとてもサイバネティックな感じ。

 明らかに現代の服装ではないということは断言出来る。未来から来た雰囲気がどことなくするのだ。

 そもそも! 現代のマント怪しく光らないし! 青白く光るパーティクルなんてまき散らさないし!


 ってか!

 なんで俺の夢の中に毎回毎回この少女が現れるんだよ!

 なんかしゃべっているのは分かるんだけど、夢の中の世界がサイレントフィルムみたいである以上、声が聞こえない。爆音だけ聞こえるのは不思議なんだけど。


 とにかくっ!この少女の目的がただひたすらに分からないから一刻も早く解明して欲しいと願うばかりだ。


 じゃないと、心に引っかかって眠れなくてなってしまう!


 いや、今の俺、寝ているんだけれども……。


 他にも気になることはあるのだが、夢である以上はもう深く考えないようにしている。

 深く気にしなければ、これ以上はもう考えなくてすむ。という理由が俺の中で渦巻いているからだ。

 だから、俺はもう夢のことでは考えない……! 絶対、考えないからなっ……!


 夢の内容を考えないことを考えているすきに、動けなくて横たわっている自分と少女が消え始める。

 相変わらず、少女は口をパクパクしているだけで、何をしゃべっているか分からないのだが、何か重要なことを呟いていた気がする。顔を見たら表情で伝わるものがあるのだろうが、未だに砂嵐で顔が隠れているのが残念。


 せめて、表情だけでも見たかったなぁ……。

 って思いながら、夢がだんだんフェードアウトしていく。

 気が付けば真っ暗だ。夢が終わってしまったからここからは真っ暗の時間。


 あぁ……。自分、何か忘れているような……。


 ん……? 何か自分、忘れているのか……?


 ーーハッ! っとして、今、目が覚めたっ!


 「友達との約束は何時からだったけ!?」


 ジリーン♪ ジリーン♪ 空中には横長の長方形のクリアウィンドウ(現実で言うスマホとテレビが合体した電化製品みたいなもの)が時刻を十三時を告げ、アラームがただひたすらに鳴り響いている。

 十二時にアラーム音設定したはずだったんだけど……。そうか!爆音として脳が処理した結果、サイレントフィルムのくせに夢で爆音だけが鳴り響いたのか!


 納得。


 って納得している場合か! いくら自分の作品を真剣に描いていたとはいえ、友達の約束を破る男だなんて最悪のさらに上を行く最悪だぞ。


 俺はデジタルパネルを消して、急いでベッドから飛び降り、そして、タンスからお気に入りのTシャツにジーパンを選んで着る。そして、お気に入りの赤ラインのベルトを締めて、外出準備を整える。


 外出準備を整えた俺は、白色のマゼンタラインのランニングシューズを履いて「行ってきます!」って気持ちよく言ってから、ドアを開けて外の世界へ思いっきり飛び出した。


 今日は二〇三〇年四月十八日で天気は快晴! 絶好の外出日和だ。外の空気が最高においしい。

 天気もよく、気温もよく、小鳥が元気よく鳴く。そして、俺は気分も爽やかな状態で全速力で走り出す。

 寝坊で遅刻している身なのだから、とにかく友達が待っている業内総合病院まで早く着かなきゃいけない。きっとベッドの上で首を長くして待っているだろう。


 俺の名前は陽彩 勇気。二十歳。


 古名矢(ふるめいし)芸術大学でデジタルアートを専攻して勉強している大学3年生だ。


 高校生の頃、自分の進むべき道が分からなくなり、偶然にも参加した古名矢芸術大学の説明会を聞いて、自分の追いかけなきゃいけない夢を思い出したっていうのもある。それは、


 「ヒーローに関わらないで!」

 ーーそう! ヒーローを創り出すのが俺の夢なのである。


 ん?


 誰か『ヒーローに関わらないで!』っていう声が聞こえた。女性の声だ。しかし、辺りを見渡してみても女性はいないし、人もいない。

 だんだん背中に寒気が走り出す。心霊現象か! 初めての心霊体験なんだけど!? 女性が『ヒーローに関わらないで!』って言ってくる心霊体験なんか聞いたことがない。

 他に気になったことを言えば、声が聞こえた瞬間、僅かながら時が止まったような感じがした。


 『対面~セイバ~♪ セイッ♪ セイッ♪ セイッ♪』

 ーー電話の着信音だ。いくらなんでも十年前の「対面セイバー」のオープニングを着信音にしているのは、流石に恥ずかしい。そろそろ変えなきゃって思っていても、大学の忙しさを理由に変えれてない。多分、これからも変えられないだろう。

 ちなみに、「対面セイバー」っていうのは、十年前にテレビでやっていた剣豪達が真剣勝負するバトルロワイヤルゲームをモチーフにした超人気特撮作品である。

 毎週日曜日の夜に放送しては、ぼやった~のトレンド一位に入っていた。

 最終回なんてそれはもう感動的で、主人公の剣先 始が必殺変身剣ラストセイバーで切腹して世界を創り直すシーンなんて涙なしではもう見れない!

 決め台詞は『俺の一線を超えたぜ!』だ。

 他にも、初代の「対面ファイター」から始まり、シューティングゲームモチーフの「対面ガンナー」、フライトシミュレーションゲームモチーフの「対面フライター」といった色々な作品が出ている。

 俺は急いでクリアウィンドウ開いて、電話を立ち上げる。


 「お前ェエエエエエエエエエエエ! また遅刻しやがって!」


 ――ゲキオコだ。


 「ごめんっ……!」


 時刻は十三時十八分。親友の声がとてつもなく心に痛かったので、また業内総合病院まで足を速めた。


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