夏休みのかくれんぼ
夏休みのかくれんぼ
真夏真っ盛りの八月。学生たちは各々部活や勉強で日々、頑張った自分達を癒やすように夏休みに入ってから十日が過ぎた頃。自分は教師の仕事に打ち込んでいた。
「暑い、、」
エアコンの無い部屋で男性教師は半袖半ズボンの格好で首にタオルを巻き、資料作りの為、夏休みに出勤していた。
「やっぱ、扇風機だけじゃ今日の暑さは凌そうに無いよなー」
と首振り扇風機を自分の背にあたるよう固定して涼んでいると、団扇を仰ぎながら汗だくのしんどそうな顔をした男性教員が部屋に入ってきた。
「あ!ひとりだけずるいですよ。自分も涼みたいです!」
彼は3年生担任で、夏休み明けにあるテストの製作に来たと、今朝会った時に言っていた。
「すみません、一人だったからつい」
「まあ、いいですよ。はい、お茶どうぞ。」
「ありがとうございます。そういえば誰か生徒いましたか?」
「あー自分のクラスの3年生と、先生のとこの5年生がいました。プールが終わったから、親御さんが迎えに来るまで体育館で5人でかくれんぼして遊ぶそうですよ」
「そうですか、5年生は誰がいたかわかりますか?」
「あー神田と渡辺の兄達でしたよ。もう鬼に見つかってしまったみたいで体育館の入り口で3人、座ってましたよ。」
「じゃあ、同じ地区の彼らですね。あの4人は仲がいいから」
作業を再開すると扇風機で涼んでいた先生が何か思い出したかのように立ち上がり、出かける準備を始めた。
「すみません先生、自分午後のプール当番なので、ちょっと行ってきます。すみませんがプールに午前の先生っていましたか?」
「ああー、今日先生だったんすか。さっき見た時は、プールサイドに中城先生がいたので今頃準備してるんじゃないですか?」
そういうと、慌てた表情で彼は急いで教室を出た。
残された教員は昼を食べ、しばらくすると午後のプールに入る子供たちが学校に来た。その時ふと先ほどのかくれんぼしていた少年たちを思い出した。
「さっきの子達はちゃんと帰ったかなー」
気になったので少し体育館を見に行った。が、体育館には誰もいなかった
「そりゃもう帰ってるよな」
と、帰ろうとすると入り口の戸の下に渡辺と書かれたプールの袋が落ちていた。忘れ物かと思い、職員室に戻り生徒の連絡簿を開き、渡辺の家に連絡するとおばあさんが出て、まだ家には帰ってきてないらしく、戻ったら取りに行かせると言われ、自分は作業に戻った。
しっかし、今朝のニュースで日中最高気温になるとは言っていたが、職員室にある唯一の扇風機がこんなにも弱々しく感じるとは。
生徒たちは夏休みだと言うのにわざわざ学校に来なきゃいけないなんて、、辛い、、
職員室の窓から外にあるプールで遊ぶ先ほどの生徒たちの声が聞こえて、男性職員はそれを羨ましそうに眺めていた。
「あ!先生見つけた!」
背後にある職員室の入り口から男の子の声が聞こえ、驚いて振り返るとそこには満面の笑みの男子生徒が入ってきていた。
「君はさっきの、、まだ帰ってなかったのか?」
「うん、かくれんぼまだやってるんだ」
と、彼は先生に近づいてきた。
「君は帰らなくても大丈夫なのか?そういえば渡辺たちとかともまだ遊んでたりするのか?」
「うん!大丈夫。でも渡辺くんたちはもういないよ」
「そうか、、じゃあ、渡辺たちはどこかで寄り道でもしてるのか」
しかし、なにか引っかかる。
その時、『ガシャーン』ととを勢い良く開ける大きな音がした。振り返るとそこには自分のクラスの女子生徒が立っていた。
「西条先生だ!なーんだ、先生も学校来てたの?」
「おう!岡部!まあちょっと休み明けの授業の準備にな」
「えー!休み明けの準備って?何なに?」
「あー!あっと、だめだ。テストのものもあるから見せられないから、来ちゃダメだ」
女子生徒はケチと言いながら部屋を出ていこうとした時、こちらを振り返った。
「そうだ、先生。ここに誰か来た?今、バスが来るまでみんなで鬼ごっこしてるんだけどあと一人だけ見つからないんだ」
あと一人って、この男の子のことか?俺の机の下に隠れてるし、、ここは合わせた方が良さそうだな。
「ここには誰も来ていないぞ」
と言うと女子生徒は不思議そうな顔をしながらも今度こそ部屋を出て行った。
「ふー危なかったな、あ、もうこんな時間か先生、ちょっとプールの片付けに行ってくるな」
西条は男子生徒の方を見るとそこには先ほどの笑顔とは真逆の顔でこちらをずぶ濡れの男の子が西条を見上げ、小さな声で
「かくれんぼしよ、、先生、、、」
「え?」
その時、男の子の背中から黒くもやのかかった手がいくつも伸びて、西条目掛けて襲ってきた。
「う、、うわーー!だっっ誰か!助けt、、」
『今度は逃さない、、』
小さな子供たちの声とともに西条の姿は消えてしまった。
続いてのニュースです。N小学校で先日、失踪事件が起こりました。
失踪したのは、教師の西条泰典さんと生徒四名です。
その日は、夏休みのプールの日で夕方になっても帰ってこない生徒の親御さんが学校に連絡したところ教師の西条さんの姿もなく、警察は当時日直っだった西条さんがなんらかの事情を知っているのでは無いかと、現在も行方を探しています。